「大相撲初場所・１２日目」（１９日、両国国技館）

　初優勝を目指す大関稀勢の里は平幕の勢を寄り切って１１勝目を挙げ、単独トップを守った。横綱白鵬は栃煌山を引き落とし、平幕の貴ノ岩、逸ノ城とともに２敗をキープ。７度目のかど番の大関琴奨菊は関脇玉鷲に押し出されて２場所連続の負け越しが決まり、来場所は史上１０位の３２場所務めた大関から関脇へ転落する。大関の降下は、現行制度となった１９６９年名古屋場所以降では２０１３年九州場所の琴欧洲以来で１６人目（１９例目）。

　観念して土俵を割った勢の前に、稀勢の里は仁王立ちした。どうだ！！と言わんばかりの表情。相手の力を受け止め、最後は力の違いを見せつけた。

　立ち合い、左を差されて後退。小手投げをこらえた。右から抱えて反撃。ぐいぐい攻め立て、相手を起こすと盤石の左まわしをつかみ、寄り切った。

　「落ち着いていたか？」と問われると「いいんじゃない」と納得顔。「じっくりか？」と水を向けられると「そうですね」とうなずいた。勢戦は１３戦全勝中だったが、単独トップを走る中、油断のできる相手はいない。「集中した」と力を込めた。

　大関在位３１場所目。３０歳を超えても、大きな故障がないのが強みだ。朝稽古では丈夫な体に関して「いろいろな方のおかげ」と、両親、先代師匠の故鳴戸親方（元横綱隆の里）に感謝。「まだまだ」と、さらなる成長を誓った。

　９日目に琴奨菊に初黒星を喫してから３連勝。初優勝へ苦しみながらも１敗をキープした。千秋楽の結びは横綱白鵬戦。何とか１差を守り、大一番に向かいたいところだ。

　地元も盛り上がってきた。茨城県牛久市役所内の「稀勢の里郷土後援会」は、優勝の可能性がある日に市役所１階部分でパブリックビューイングを検討。関係者は「今度こそ」と期待にあふれている。

　「また、集中してしっかりやりたい。あしたはあした」。残り３日、故郷にもうため息はつかせない。