稀勢の里の恩師が喜びの声「努力で天才に勝った」 中学時の担任・若林さん
「大相撲初場所・千秋楽」(22日、両国国技館)
14日目に初優勝を決めた大関稀勢の里(30)=田子ノ浦=が横綱白鵬(31)=宮城野=を破って14勝1敗とし、初の天皇賜杯を手にした。
横綱白鵬を破って、横綱昇進を決定的にする一番に、15年前に教え子が残した言葉が重なった。「見せてもらいました!努力で天才に勝つところを!」。稀勢の里の母校、茨城県・龍ケ崎市立長山中学校で2、3年時の担任を務めた若林克治さんは、そういって目頭を押さえた。
中学の卒業文集で、稀勢の里はこんな言葉を書き綴っていた。「天才は生まれつきです。もうなれません。努力で天才に勝ちます」-。若林さんは「15年の努力が形になってよかった」と、当時を思い返しながら話した。
どちらかというと、手のかかる生徒だった。同級生より、頭1、2つ抜けた体格をもてあまし、野球部の練習だけではエネルギーを消費しきれない。休み時間に、同級生にじゃれついては、力余って泣かせることもしばしばだった。
ただ、中学3年になり、鳴戸部屋に入門することが決まると、精神的に一気に大人になったという。「最後の学生生活というのもあったんだと思う。やんちゃだったのが、前向きなクラスのムードメーカーになった。合唱では率先して指揮者もやりましたから」。誰よりも早く別れを迎えることになる学生生活に思い残すことがないように、仲間たちと全力で楽しんだ。
卒業の時、同級生にサインをねだられたが、師匠から一人前になるまでサインを禁止されており、色紙とジャージーに手形を残した。「優しくて、ひょうきんなところもある。これからも優しくて強い横綱になってもらえたら」。若林さんは嬉しそうに、画面の向こうで頼もしくなった教え子を見つめた。