マラソン&競歩の札幌案 海外選手・関係者にも波紋「無駄な努力に」不満の声や論戦も
国際オリンピック委員会(IOC)と、東京2020大会組織委員会が猛暑が懸念される東京五輪のマラソン、競歩の札幌への移転で合意した。東京五輪まで残り300日を切る中での前代未聞の開催都市変更には“地の利”がある日本選手だけではなく、東京を想定していた海外選手や関係者にも波紋を広げており、不満の声も出ている。
18年のボストンマラソンを制したロンドン、リオ五輪女子代表のデジリー・リンデン(米国)は「五輪スタジアム(新国立)でフィニッシュできるのは魅力だったし、モチベーションだったのに」と、残念がった。08年北京五輪6位入賞のマーラ・ヤマウチさん(英国)も「多くの選手は(酷暑の)ドーハの世界選手権を東京五輪のリハーサルとして挑んだと思う。それが無駄な努力になってしまう。この決定は2、3年前にされなければならないもの。9カ月前ではない」「札幌は素晴らしい街で、より涼しい。ただ、アスリートの大会のための準備は数年掛かります。これらの計画を今更変更する必要がある」と、ここにきての変更を批判した。
ドーハ世界選手権で、男子50キロ競歩銅メダルを獲得したエヴァン・ダンフィー(カナダ)は自身のツイッターで「すでに予約した家族や友人の航空機代、宿泊施設を支払ってくれるのか。五輪の経験を台無しにしようとしている。これに関してアスリートの意見は聞いたのか?」と疑問を呈した。すでに暑熱対策への準備を進めていたようで「熱に備え、尊重してきた。適切に準備をしていれば、何も恐れることはない。20年間夢見てきたメダルのチャンスを減らされる」と、不満をにじませた。
同50キロ競歩の世界記録保持者で、ドーハ世界選手権では途中棄権したヨハン・ディニズ(フランス)は、フランス紙「ルモンド」の取材に「札幌への移転は良いこと」。スピード勝負に自信をもつだけに「北海道は東京より5~10度気温が低く、湿度が低く、息苦しさがなく、私に合った気候になる」と歓迎。これにダンフィーは“噛みつき”、ディニズがドーハについて暑熱対策をしていなかったと語っていることについて触れ「準備しないもののために競技会を変更しないで」と批判。ツイッター上で論戦を繰り広げた。