パーマー氏はゴルフ界の“本物の王者” 心が強いからこそ誰にでも優しかった

 プロゴルフの人気を飛躍的に高めた米国の往年のスター選手、アーノルド・パーマー氏がペンシルベニア州ピッツバーグの病院で25日に死去したと米国ゴルフ協会(USGA)が同日(日本時間26日)発表した。87歳。

  ◇  ◇

 アーノルド・パーマーの悲報が飛び込んだのは、今季最終戦の最終日、ロリー・マキロイがウイニングパットを沈めたちょうどそのころだった。

 きっと優勝争いの邪魔をしたくなくて旅立つのをちょっと待っていたのかな。そんなことを思った。

 90年代序盤に渡米した私は黄金時代のパーマーをこの目で見たことがない。初めてパーマーに声をかけたのは96年。彼のお膝元のベイヒルで開かれた大会で「写真を撮らせて」と恐々お願いしたら、当時60代だったパーマーはピンと背筋を伸ばし、カメラ目線でニッコリ。俳優みたいなポーズの取り方と丁寧な対応に“本物”を感じさせられた。

 あれから20年。パーマーを毎年ベイヒルで眺めてきた。嵐で浸水したコースに長靴姿でジャブジャブ、先頭切って入っていったのはパーマーだった。入り組んだ裏道に迷い込んだとき、乗用カートで先導してくれた。薄暗い早朝、パジャマ姿で犬を連れ、「グッドモーニング!」と声をかけてくれた。

 齢を重ね、肉体が弱っても、心が強いからこそ誰にも優しかった。ゴルフ界の“本物の王者”はこの世からは消えてしまったけれど、アーニーの笑顔は誰の心にも、私の心にも、永遠に生き続ける。

(在米ゴルフジャーナリスト・舩越園子)

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