体のさまざまな細胞になり得る人工多能性幹細胞（ｉＰＳ細胞）から心筋を作り、患者に移植する初の臨床応用をしたと米ハーバード大客員講師を名乗る森口尚史氏が米国の学会で１１日発表した。

　だがハーバード大と、治療を実施したという関連病院は「治験が承認されたことはない。両機関とも森口氏と関係はない」との声明を発表。正規の手続きを経た臨床研究とする森口氏の説明は事実無根と分かった。

　治療行為自体も実施されていない可能性が濃厚。ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった山中伸弥京都大教授のｉＰＳ細胞をめぐり混乱する異例の事態に。森口氏は共同通信の取材に対し「大学から暫定的な承認を受けた」と説明。だが大学側は否定しており、手続きを経ないと臨床研究はできない。森口氏は再度の取材に「大学に所属していることの証明書類は日本に置いてある。日本に帰らないと証明できない」などと説明した。