渡辺謙を熊から守れ!主演映画厳戒ロケ
俳優・渡辺謙(53)がこのほど、北海道・上川町に設営されたオープンセットで撮影中の、主演映画「許されざる者」(来秋公開、李相日監督)の現場取材に応じた。大自然に囲まれたセット付近はクマの生息地とあって、スタッフは『謙さんを守れ!!』の大号令のもと、電気柵を設置するなど、入念な対策をとっている。渡辺は北の大地で、93年の米アカデミー賞最優秀作品に輝いた、ハリウッドの名作のリメークに文字通り“命がけ”で取り組んでいる。
合言葉は「謙さんを守れ」‐。全編北海道ロケの最大の脅威は、寒さよりクマだった。
ハリウッドの有名西部劇を、明治初期の時代劇としてよみがえらせるため、大自然にオープンセットが設営された。もとは畑だった携帯電話の電波も届かない標高900メートルの場所だが、雄大な大雪山を望み、作品イメージにぴったり。すでに初雪が降り、夜には氷点下まで冷え込むが、スタッフは厳しい気候以上に、冬眠前で活発に動くクマの対策に追われた。
渡辺ら出演キャストには事前に“マニュアル本”が配布された。防御策として、オープンセットの敷地を取り囲むように、触れると電気が流れる柵を設置。食べ物のニオイに誘われて近づかないよう、屋外での食事厳禁を徹底している。
渡辺は9月22日に阿寒湖でクランクイン。今月1日から上川町のセットで撮影を始め、今のところ遭遇していないが、「クマがいるところに僕らがお邪魔してますが、できるだけ顔を見せないようにしてほしい。夜は真っ暗ですし、何が出てもおかしくない」と警戒している。
大自然ならではの恐怖と、背中合わせの撮影。クマに気を配りつつも、大好きな球団のことが頭をよぎる。「阪神の選手を連れてきて、この厳しさを味わわせたいよ」。5位に沈んだ虎ナインに“ショック療法”による奮起を提案した。
文字通り、体を張った撮影だ。かつて伝説の人斬りとうたわれながらも、刀を置いて静かに暮らす農民・釜田十兵衛を演じる渡辺は、見た目の貧困さを表現すべく、体重を9キロ落とした。
「いつもは(役作りに)こねくり回してしまうタイプですが、今回はガチガチには作らず、大地感、空気感にどっぷり身を浸して、このシチュエーションを体感しています」。日本が世界に誇る名優が、ハリウッドの名作に引けを取らない上質な作品を、北の大地で生み出す。