若松監督の葬儀、寺島しのぶらが参列
12日に交通事故に遭い、17日に亡くなった映画監督・若松孝二さん(享年76)の葬儀・告別式が24日、東京・青山葬儀所でしめやかに営まれ、女優・寺島しのぶ(39)、俳優・井浦新(38)ら約600人が参列した。2010年の監督作「キャタピラー」でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した寺島は「教えていただいたことを胸に、監督をびっくりさせるような芝居を心掛けていきます」と涙ながらに誓った。
人間同士として向き合ってくれた“恩人”との別れはつらかった。若松監督の大きな愛情と厳しい言葉に触れ、大女優へ成長を遂げた寺島のほおを自然と涙が伝った。
「キャタピラー」での栄誉は、子づくりのため休業を考えていた時期に、若松監督からオファーを受けた結果だっただけに「銀熊は監督のものだと思っています」と感謝した。現場では怒鳴られることもあったが、その裏にある愛情も十分感じていた。「人として正直にがっぷり向き合って下さった。一言一言が勉強になりました。教えていただいたことを胸に、監督をびっくりさせるような芝居を心掛けていきます」と誓った。
“若松組”のメンバーも悲報に衝撃を受けた。特に「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(08年)から遺作の「千年の愉楽」(来春公開)まで5本連続で若松作品に出演した井浦は憔悴(しょうすい)。
任された弔辞では、目を真っ赤にしながら、監督が事故に遭う直前まで一緒に食事をしていたことを告白した。「タクシーに乗せて見送った背中が最後の別れになるなんて…考えもしませんでした」と途切れ途切れに話すと、厳しくも優しかった監督の顔が浮かんだ。涙があふれる中、「しみったれた空気にしてしまいました。また“バカヤロー”って言われてしまいます」と絞り出した。
棺(ひつぎ)は、故人が生前に「衝撃を受けた」というギリシアのテオ・アンゲロプロス監督の「旅芸人の記録」(75年)のワンシーンにならい、参列者の拍手で送り出された。反骨に生きた映画人の旅立ちは、まるで観客のスタンディングオベーションのようだった。