「あまちゃん」音楽家・大友氏の秘話

 NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のオープニングテーマ曲などを手掛けた音楽家の大友良英氏(54)が、ドラマ終了を前に本紙のインタビューに応じた。高校野球の応援曲としても人気となったテーマ曲や挿入歌「潮騒のメモリー」「地元へ帰ろう」などの曲は、ドラマのストーリーとともに大きな話題を呼び、番組関連のCDは大ヒットしている。社会現象にもなった人気ドラマを音楽で支えた大友が現在の心境や“じぇじぇじぇ”な制作秘話などをたっぷり語った。       

 最近「あまちゃんロス症候群」という言葉が世間をにぎわせている。「あまちゃん」が終了した後の視聴者の喪失感を表す言葉だ。実は大友自身、“あまロス”にかかりそうな1人なのだという。「そろそろ番組が終わるので心配しています」と明かす。

 社会現象となったドラマに携わった期間を「お祭り」と振り返る。「長い伝統があるお祭りなら、すぐ役割は決まるけど、『あまちゃん』は初めて作るお祭り。これどうする?など相談しながら作り上げた。音楽も美術も役者もバラバラじゃなく、みんなでお互いの神輿(みこし)を担いだ感じがあった。だから面白かった」。これまでにない形式での映像音楽制作は刺激的だった。

 みんなで作った代表作が、天野春子(小泉今日子)が歌う「潮騒のメモリー」だった。曲の制作依頼からして型破りだった。「普通は『こういう曲を』と言われるけど、『86年に60万枚ヒットした曲を作ってください』と。すでにヒットしている曲?ありえないという感じでした」

 86年当時、自身はフリージャズ、ノイズの音楽に傾倒し歌謡曲とは無縁だった。まずは徹底的に80年代のヒット曲を聴き、当時の典型的なコード進行を取り入れたメロディー、音色、アレンジにこだわった。小泉、脚本担当の宮藤官九郎(43)らも仕事の枠を超え意見を寄せ、80年代の音楽を知る作曲家のSachiko M氏と共同で曲を作り上げた。「地元に帰ろう」「暦の上ではディセンバー」などの挿入歌も同様だ。

 ドラマのために作った曲は300曲ほどになる。中でもオープニングテーマ曲は自身も想像しなかった広がりをみせた。ノリのいいスカのビートに日本のチンドンのビートを混ぜた曲は、日本の朝に元気を運ぶ曲として人気となり、夏の甲子園では、出場校の多くが応援歌に採用するまでに。

 テーマ曲の最初の制作イメージは「ウニを食ってうまい!」。物語の舞台、岩手県・久慈市を訪れた際に、ウニを食べて感じたままを音楽にしようと考えた。「食べ物と音楽は人間の本能の部分で共通する。おいしいものを食べると顔がほころぶ。うれしくて跳ねたり踊りたくなる。そんな曲を作ろうと思った」と振り返る。

 甲子園での反響には驚きを隠せない。「ドラマをどう見せるかを考えて作った曲が、人を元気づけ、得点を入れるための応援曲になるのですから(笑)。驚いてます。逆に僕が一番元気になったかもしれない」という。

 みんなで作った「お祭り」のドラマも28日に終了する。ヒロイン・天野アキ役の能年玲奈(20)に対しては「これから大変だと思う。いきなりこの現場を知ったから。こんな面白い現場は他にないからね」と気遣いも。

 「だれでも、お祭りが終わればさみしい。だから『あまロス』になるのです。でも半年間夢見て楽しんで、また現実に向かっていくしかない。被災地の方は本当に厳しいのです。現実に戻り頑張るしかない」

 10月には「大友良英&『あまちゃん』スペシャルビッグバンド」として、ドラマの曲を演奏するコンサートを開催する。「僕もそうですが『あまちゃん』が終わり『あまロス』を治すために、いい処方箋になるはず」。演奏することでファンと一緒に現実へ向かっていくつもりでいる。

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