アラフィフ・アイドルがスゴすぎる理由
大人気だったNHK朝の連ドラ「あまちゃん」効果で、70~80年代に活躍したアイドルにまたスポットが当たった。ドラマでは、小泉今日子と薬師丸ひろ子が健在ぶりを見せつけたが、この人もまたすごい!
デビュー35周年を迎えた石野真子だ。1978年に「狼なんか怖くない」でデビュー、当時は八重歯がのぞく可憐(かれん)な姿が“百万弗の笑顔”と称されたトップアイドルだった。最近はテレビの2時間ドラマにちょいと暗めの役などで登場しているが、ライブを見て、改めて“アイドルの実力”を見せつけられた。
何がすごいのかと言えば…写真を撮ればすぐ分かる。コンパクトカメラを使って、別にポーズを要求したわけではないのに、撮った写真を見ると1枚1枚がちゃんと決まっている。いわゆる目線がちゃんと、こっちを向いているのだ。もうひとつ、ステージ上の振りがアイドルなのだ。ステップの時に振り出す脚が腰の動きと連動する。これが簡単そうでなかなかできない。アイドルグループのデビューイベントを見ていても、石野真子型のステップ(レベルは低いが)ができていたのは、5~6人のうち1人ぐらいだった。常にファンに注視されながら、テレビ局を1日に何局も掛け持ちし、笑顔をふりまく。毎日歌って踊って、さらにライブもやればドラマにも出る。そんな生活を送っていると、無意識のうちに“芸”が肥えてくるのだろう。年齢を重ねても、身についたものは忘れるものではない。石野真子のライブは、いわば“アイドル道”そのもの。後に続く松田聖子、小泉今日子、早見優、中森明菜らの先駆けになったのだ。
石野真子以前には、もはや伝説となったしまった山口百恵、桜田淳子、森昌子の“花の中三トリオ”、ケイーとミーの怪物デュオ「ピンク・レディー」が日本の歌謡界を席巻したが、80年代になって花咲く松田聖子以降の「アイドル全盛時代」は、この石野真子が礎になっているのではないだろうか。あの小泉今日子が「スター誕生!」で合格した際に歌ったのが、石野真子の「彼が初恋」であり、同じ事務所とレコード会社に所属したことにもそれがうかがえる。
現在は、アイドルといえばグループである。1985年にフジテレビの「夕やけニャンニャン」から誕生した「おニャン子クラブ」がそのルーツで、アイドル像も文字通りの“偶像”から、親しみやすさに変質した。それもいいだろうが、やはりピン(1人)でアイドルを張ってきた石野真子、松田聖子、小泉今日子らとは何か異質な気がしてならないし、すごみも感じない。
「あまちゃん」の中の小泉今日子は、80年代すべてのアイドルの象徴だ。アキの母親・天野春子には小泉今日子自身も存在するし、やんちゃな側面は中森明菜、中山美穂に通じる。もちろん(有村架純が演じた)高校時代は松田聖子そのものだ。「潮騒のメロディー」を聴いていると、なぜかそんなアイドルすべてを思い浮かべてしまうのは、わたしだけだろうか。真のアイドルというものは、そこまで強烈であってしかるべきだと思うし、聴かせるノドもある。
世代の違いは仕方ないもので、アイドル=グループも結構。アキとユイのデュオはピンク・レディーまで行かないまでもWinkをほうふつとさせるし、GMTは昨今のご当地アイドルを見事に表している。でも…やっぱりアイドルはピン(1人)がいい。今年は石野真子のライブと小泉今日子の演技を見られただけで、ものすごく得した気分になっている。日頃はロックしか聴かないオヤジが、40台後半から50台前半のアイドルを改めてすごいと思っている。(デイリースポーツ・木村浩治)