クリス・ハート「日本への感謝を歌う」
米国人歌手のクリス・ハート(29)が30日、三重県内で行われた音楽イベント「LIVE in MIE」に出演し、大みそかの「紅白歌合戦」初出場決定後初めて、歌声を響かせた。デビューのきっかけとなったのど自慢番組出演から、わずか1年9カ月でのジャパニーズ・ドリーム実現。本紙取材に流ちょうな日本語で「日本への感謝と愛を込めて歌う」と抱負を語った。
紅白出場の一報は、故郷の米サンフランシスコでのレコーディング中に聞かされた。「信じられなくて言葉にならなかった。両親と奥さんに報告したら喜んでくれた」。歌うのは松田聖子とのデュエット曲「夢がさめて」だが「夢を見ているよう。まださめないです」と笑わせる。
12歳のとき、中学校で日本語を受講して「日本」と出会い、J‐POPに魅了された。「最初に気に入ったのがKiroroの『未来へ』。メロディーが美しくて、歌詞が分からなくても意味が分かった」。歌の通り、青年は未来へ歩き出し、現地の日本語放送の音楽番組をむさぼるように見た。紅白を知ったのもこの頃。「いつか出たいな、とあこがれだった」という。
翌年には日本に2週間ホームステイ。米国に帰り、オフコースの曲を聴くと日本に帰りたくてホームシックにかかった。「歌手になりたいというより、日本に住みたかった」と思いを募らせ、24歳の09年に再来日。自動販売機の販売・修理をする会社に就職した。
転機が訪れたのは昨年3月。日本テレビ系「のどじまん ザ!ワールド」で優勝。愛くるしいポッチャリ体形から発せられる“奇跡の歌声”でJ‐POPを歌う様子がお茶の間のハートをキャッチし、デビューのきっかけをつかんだ。
そこからは一気に階段を駆け上がり、今年5月に初シングル「home」を発売。10月には「10代から大好きだった」聖子とデュエット曲をリリースし、紅白まで決めた。
「いつでも優しくて、相手の気持ちを考える日本人と日本の文化が大好き。日本の家族の一部になりたい」と語る。「日本食が大好き。特にウニとイクラの刺し身にはまってます。納豆もOKね」と笑みを浮かべる。
この日は、デビュー曲など6曲を披露。大声援を受け「来年は、もっと日本の多くの場所で多くの人の話が聞きたい。日本文化がもっと理解ができて、歌がもっとうまく歌えるようになると思うから」。日本人のような生真面目さを携え、大みそかに奇跡の歌声を響かせる。