美空ひばりの息子「記念館楽しんで」
戦後日本最大のスター、美空ひばりさんの東京都目黒区の自宅を公開する「美空ひばり記念館」が、今月28日にオープンする。
ひばりさんの息子でひばりプロダクション社長の加藤和也氏(42)が25日、デイリースポーツの取材に応じ、「母が両腕を広げて『どうぞいらっしゃい』と言っている感覚で楽しんでいただき、そのままのものを感じていただきたいですね」と、オープンにあたっての思いを明かした。
各国大使館が立ち並ぶ目黒区青葉台に、ひばりさんの自宅は生前のまま残されている。
入り口から階段を上ると桜や藤に彩られた庭があり、ひばりさんが最も長い時間を過ごした和室に至る。とんねるずや中村メイコ、奈良岡朋子、岸本加世子ら気のおけない友人たちとしばしば朝方まで過ごした部屋だ。
和也氏は「一番思い出深い部屋です。全ての皆さまがこちらでお食事をしていただいた、母の一番好きな場所です」と言う。ここではファンに軽食や甘味、例えばひばりさんが好きだったのと同じ味付けのところてんなどが用意される。
隣の仏間は、通夜でひばりさんの亡きがらが安置された、まさに聖地。ファンもここで線香を上げ、仏壇に手を合わせることができる。ひばりさんも出発時と帰宅時、必ず手を合わせた仏壇だ。
ファンが入れるのはここまでだが、和室とともにひばりさんがくつろいだ洋間も大きなガラス戸越しに見ることができる。カーペットはひばりさんの好きな紫で、グランドピアノも紫。アレンジャーが弾くこのピアノに合わせて、ひばりさんが「みだれ髪」「愛燦燦」「川の流れのように」など晩年の名曲の最終調整を行った。ここもまた聖地だ。
和也氏は「母が常々言っていたのは『ファンの方あっての自分』。母が羽を休めていた空気そのものを感じていただいて、ゆっくり物思いにふけっていただければ」と、開館にあたっての思いを明かしていた。
記念館にはひばりさんゆかりの品々が飾られ、大きな見どころになっている。
カーポートにある愛車のキャデラック、整備されており、バッテリーを取り付ければ今でも走ることができる。和室には晩年に描いた水彩画、好きな言葉「真実一路」を書いた掛け軸、ひばりさん一家が使った姿見。仏間には国民栄誉賞の賞状、盾、副賞の純銀の水差し。洋間には藤娘にふんしたひばりさんをモデルにした油絵など。絵や掛け軸は定期的に掛け替えられるという。
また、洋間にはひばりさんが1989年5月に和也さんへ贈った書がかけられている。ひばりさんは同年6月に死去したため、事実上の絶筆だ。