健さんと交流の被災少年“男の誓い”

 がれきの中、口を引き結んで水を運ぶ少年。東日本大震災の直後に撮られた報道写真を、俳優の高倉健さんは台本に貼り付けていた。そのことを人づてに聞いた少年が手紙を出し、健さんとの交流が始まった。励ましの手紙を受け取った少年は「頑張るから見てて」と、前向きに生きていくことを天国の健さんにあらためて誓っている。

 少年は宮城県気仙沼市の中学2年松本魁翔(かいと)君(14)。津波で流された船で自宅が壊され、母、姉、妹と今も仮設住宅で暮らす。写真は、当時10歳の魁翔君が断水の中、井戸まで何往復もして大きなペットボトルに生活用水を運んでいたときに撮影された。

 初めて手紙を出し、返事が届いたのは中学校入学直前の昨年4月初め。「常に被災地を忘れないことを心に刻もうと(映画の)撮影にのぞんでいました」「遠くからですが貴方の成長を見守っています」と温かい言葉が並んでいた。

 まだ津波の痕跡が残り、復興の気配も感じられず、仲の良かった友達は内陸に引っ越していき、新生活への不安も重なっていたころで「どれだけ頑張ればいいんだろう」と心が折れかけていた。

 「頑張っていれば見ていてくれる人がいる」とうれしかった。仮設住宅のトイレにこもり一人で手紙を読むこともある。

 健さんは「人生で一度しか味わえない子供時代の日常生活を平穏に過ごしてほしい」とも記しており、自分とのことがマスコミに取り上げられて騒がれると魁翔君のためにならないと考えていたようだという。公にしないことを「男と男の約束だ」と捉え、手紙のことはずっと秘密にしていたが「自分のようにこの手紙で勇気づけられる人もいるかもしれない」と公開した。

 将来の夢は得意なスポーツで有名になって気仙沼を盛り上げること。「震災とか悲しいことを思い出さなくていい、楽しい所にしたい」と力強く話した。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス