ピース又吉 「三島賞」1票差に散る
お笑いコンビ・ピースの又吉直樹(34)による初の本格的小説「火花」がノミネートされていた文学賞「第28回三島由紀夫賞」(新潮文芸振興会主催)が14日、都内で発表され、上田岳弘氏(36)の「私の恋人」が受賞した。又吉は惜しくも受賞を逃した。賞の発表中、又吉は都内で行われていた映画「シンデレラ」(公開中)の川柳コンクール表彰式に出席しており、式の最中に結果を知ったという。又吉はノミネートへの感謝と、次回作への意気込みを語った。
又吉は衣装替えの時に、スタッフから聞いて結果を知ったといい、終始緊張した雰囲気だった。イベント後、「候補に入れていただけたっていうのが、ちゃんと読んでもらえるんやなあっていうのがすごいうれしかった」と感謝した。
「火花」はお笑い芸人を主人公に、濃密な人間模様が描かれた青春小説。累計発行部数は純文学としては異例の35万部を超え、社会的な話題になった。
会見した選考委員の作家・辻原登氏(69)によれば、候補に挙がった5作品中、上田氏の作品と又吉の作品が最後に残ったという。選考委員5人が挙手し、3人が上田氏、2人が又吉を推した。
辻原氏は「又吉さんの作品は漫才師が主人公で非常に特異な内容。読者をぐいぐい引きずり込む。非常にレベルが高い」と評価。「見事な職業小説であり、青春小説。若者がどう生きているかを描いた。素晴らしい表現があった」と述べ、「落ちるはずのない作品が落ちた。欠点は思いつかない」と絶賛した。
惜敗した又吉だが「せっかくなのでまた次、書いていきたい」と次回作への意気込みを示した。現在は芸人と作家の二足わらじを履いているが、「今まで通り基本10割芸人で、プライベートな時間に作家をやる」と“芸人・又吉”を強調。「でも、嫌になったら全部やめます」と、芸人らしくオチをつけた。