安藤忠雄氏 コスト増「承知してない」
2520億円に膨らんだ巨額の総工費が問題になっている新国立競技場のデザインの採用を決めた審査委員会の委員長で、建築家の安藤忠雄氏(73)が16日、都内で会見した。コストに批判が高まってから、安藤氏が会見するのは初めて。国際コンペの審査委員長として「デザインを選んだ責任はある」とした上で、コスト増の責任については「基本設計以降のプロセスは承知してない。頼まれたのは選出まで」と否定した。
200人を超える報道陣が集まった中、渦中の天才建築家が沈黙を破った。余裕の笑みを浮かべながら登場した安藤氏は、関西弁を駆使しながら、独壇場に持ち込んだ。
冒頭から「(7日の)有識者会議に出なかったら、全部安藤さんのせいや、っていうのは分からん。(カメラマンに)そんな写真撮らんと、聞いてください」と先手を打った。数問質問を受け付けた後、行程の記されたパネルの前に立ち、マジックで文字も書き込み“潔白”を主張した。
「私たちが頼まれたのはデザインの選定まで。実際にはアイデアのコンペで、徹底的なコストの議論にはなっていない。基本設計以降のプロセスは承知していない」と説明した。
その上で2520億円まで膨らんだ総工費については「私ももっと(コストが)下がらないか聞きたい。一人の国民として何とかならないかと思う」などと話した。
世論の批判を受けて、政府は15日に計画の見直しに入った。デザインを手がけたザハ・ハディド氏の案を白紙に戻すことも検討されているが、安藤氏は「国際協約としてザハ氏は外せない。そうでないと日本の国際的信用を失う」と、建築家の視点から語った。