「鬼平犯科帳」27年の歴史に幕
1989年7月に歌舞伎俳優の中村吉右衛門(71)主演でスタートしたフジテレビ系時代劇「鬼平犯科帳」が、2016年末から17年初頭に放送予定のシリーズ第150作「鬼平犯科帳スペシャル」(前後編)をもって終了することが15日、分かった。故・池波正太郎さんの時代小説を原作にした人気シリーズは今月18日放送の第149作「-浅草・御厩河岸」(後9・00)と合わせ、残り2作となった。
平成の年号とともに産声を上げた名時代劇。物語の長谷川平蔵の年齢と同じ45歳の時から26年にわたり“鬼の平蔵”を演じ続けてきた吉右衛門は「四半世紀、大変魅力的な“鬼の長谷川平蔵”という役に、真摯に、そして一生懸命に向き合って参りました。私が常に意識しておりましたのは、原作で描かれる平蔵自身の行動力、生き生きと切れのある立ち回り、市中を駆け巡る軽やかさ、そして静かな中に見せる人情味でございます。それこそが“鬼平犯科帳の神髄”」と作品にかけた思いを明かした。
作品に出演した江戸家猫八さん、高橋悦史さん、蟹江敬三さんらが他界。「改めて月日の流れを感じます」と振り返り、「鬼平を溌剌と演じられるうちにフィナーレを迎えるのが最善と思い、来年の撮影で記念の150作となるのを期に決断した次第です」と説明した。
ドラマは89年から01年まで連続ドラマとして放送。05年から単発の特別ドラマとして放送を続けた。
終了の要因には制作の苦悩もあった。これまで「原作にないものはやってくれるな」という原作者・池波氏の遺言を守り、複数の原作を組み合わせるなどアレンジを加えながら放送を続けてきたが、近年はその作業にも限界が見えた。節目の第150作で有終の美を飾りたいとの思いも強く、149作放送前に決断した。
吉右衛門にとっては親子で縁のある役柄だった。父・八代目松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」(NETテレビ=現・テレビ朝日)で平蔵の息子・辰蔵役で出演。40歳の時に「鬼平-」の出演依頼があったが、年齢的に若かったこともあり、「できません」と一度は断った。45歳の時に再び依頼され、快諾した。
16年夏予定の撮影が最後の現場となる。「有終の美を迎えられるよう、これからも精進して参ります」。四半世紀以上演じてきた役柄に最後まで全身全霊で向き合っていく。