昨年１１月３０日に多臓器不全のため、９３歳で死去した漫画家・水木しげるさんのお別れの会が３１日、東京・青山葬儀所で営まれ、関係者８００人が参列した。水木さんの妻・武良布枝さん（８４）の自伝が原作のＮＨＫ連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」（１０年）で夫婦役を演じた俳優・向井理（３３）、女優・松下奈緒（３０）は、目を潤ませながら思い出を語り、故人に別れを告げた。

　“ゲゲゲの夫婦”が水木さんをしのんだ。笑顔が映える遺影が置かれた祭壇へ献花を終えた２人は、並んで取材に応じた。生前「１００歳まで生きる」と公言していた故人を思い浮かべた向井は、「不死身のような人だと思っていたので（訃報は）信じられなかった」とうつむきながら言葉を絞り出した。

　水木さん夫妻をモデルにした村井茂＆布美枝夫妻を松下と熱演した「ゲゲゲ－」がブレークのきっかけとなった向井だけに、水木さんは“恩人”だった。出演決定時は「ご存命の方を演じるのは難しく、プレッシャーがあった」と不安に押しつぶされそうだったという。

　０９年１１月からの撮影を前に対面した水木さんから「好きなようにやりなさい」の一言だけ声を掛けられ、光が見えた。「楽になった。その言葉は一生忘れないと思う。その言葉を糧にこれからもやっていくんだろうと思います」と役者生活を送る上での何よりの“金言”を胸に活躍を誓った。

　お別れの会を前に布枝さんと涙の対面を果たした松下も、出会いに感謝した。ドラマ出演を「私にとっては宝物」と言い切り、「先生を支える人に一瞬でもなれたことは本当に素敵なこと」と涙を浮かべた。撮影時に布枝さんが水木さんを「お父ちゃん、お父ちゃん」と呼んでいたのが印象的だったとし、天国へ向け「大好きな漫画と奥さまのことをいつまでも見守って下さい」と呼びかけていた。