神田正輝コラム(3)石原プロの役者
【ナンダカンダで40年】僕のデビュー作は日本テレビ系ドラマ「大都会 闘いの日々」(1976年放送)なんですけど、あれでやめときゃ、今、役者やらないでよかったんですよね。たぶん今頃、他の仕事をして、悠々自適に暮らしてたんじゃないかなと(笑)。
なんて考えるほど、年明けからこの3月までドラマ「クロスロード」(NHK BSプレミアム、木曜後9・00)と闘ってきました。まさに“闘いの日々”でしたよ。全6話のうち3話を終え、ちょうど折り返したところです。今週の第4話は、どんな映像になっているのでしょうか。
2月に第1回の試写を上映した後の会見で、僕の娘役を演じている北乃きいちゃんは「新しい引き出しが増えた」と言ってました。それはいい言葉だなと思ったんだけど、僕は“引き出し”がないから。石原プロはみんな芝居うまくないですからね(笑)。それは、いわゆる“芝居”をしないという意味でね。演技を感じさせないほど自然体だということで、石原裕次郎さん以来、石原プロの俳優に引き継がれているところだと思いますね。
役者として数多くの作品に出てきましたけど、セリフをしゃべったり、動くことで伝えるのではなく、全く何もしないで伝えるということの壁にぶつかっています。セリフでも態度でも示さずに「これを表現して欲しい」と監督に言われて。舞台でよく「魂を売る」というのがありますけど、このドラマではカメラの前で魂を売りながら、カットが入る度に途中で魂を何回も切らなきゃいけない。最初の1週間は現場に行くのも嫌でしたよ。
それでも2月半ばを過ぎると、台本を見るのも嫌というような気持ち悪さはなくなりました。慣れてはいけないと思うんですけどね。こういう現場は65歳の僕にとってはいいのかもしれない。頭が化石化する前に、また活性化したりしてね。
きいちゃんは本番になると僕を怖い目でにらんだり、すごく切り替えができる女優さん。しっかりした芝居で、いい経験させてもらってます。