“巨匠”蜷川幸雄さん死去 80歳 

 演出家で文化勲章受章者の蜷川幸雄(にながわ・ゆきお)さんが12日午後1時25分、肺炎による多臓器不全のため死去した。80歳。埼玉県川口市出身。通夜は15日午後6時から、告別式は16日正午から、いずれも東京・青山葬儀所で行われる。喪主は妻宏子(ひろこ)さん。国内外の現代劇や古典の他、シェイクスピアやギリシャ悲劇を斬新な解釈と大胆な手法で演出。海外でも評価が高く「世界のニナガワ」と称された。また、「鬼の蜷川」と言われる厳しい指導で、多くの若手俳優を舞台人として鍛え上げた。近年は体調がすぐれなかったが、精力的に仕事を続けていた。

 所属事務所によれば、蜷川さんは「現場に復帰しようという強い意志のもと治療、リハビリをして」いたが、かなわなかった。

 酸素吸入用チューブと車いすが手放せない姿が日常になっていたように、近年は病魔との闘いが続いていた。2014年11月には香港での公演中に肝臓などの不調を引き起こし、現地で緊急入院。昨年12月中旬、「元禄港歌-千年の恋の森-」の稽古中に体調を崩して軽度の肺炎と診断され、入院した。

 今年1月上旬から稽古に入る予定だった、蜷川さん自身を戯曲化した新作「蜷の綿-Nina’s Cotton-」は同22日に延期が決定。蜷川さんは「恥ずかしい気持ちはあるのですがとても面白いので、演出しようと決意していただけに、悔しい気持ちでいっぱいです。早く回復して劇場に戻ります」と復帰への意欲を見せていたが、「体力が落ちており、日常生活が難しい状態」(担当者)に陥っていた。

 今月25日には、芸術監督を務める彩の国さいたま芸術劇場で、シェイクスピアの戯曲全37作品を上演する「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の第32弾「尺には尺を」(藤木直人、多部未華子主演)が初日を迎えるところだった。4月半ばには次回作として、1970年代から名コンビを組んできた唐十郎氏の戯曲「ビニール城」をV6の森田剛主演、宮沢りえの共演で今年8月に上演することを発表していた。

 新劇、小劇場での活動をへて74年に「ロミオとジュリエット」で大劇場、83年には「王女メディア」で海外に進出。99年に英ロイヤル・シェイクスピア・シアターで「リア王」を上演するなど毎年のように海外公演を行った。西洋の演劇に、日本的な意匠を大胆に採り入れた演出は熱狂を呼び、「世界のニナガワ」と称された。

 また、「稽古場で俳優に灰皿を投げる」と称された厳しい指導で藤原竜也をはじめ多くの若手俳優を鍛え上げ、彩の国-では中高年で構成する「さいたまゴールド・シアター」、若者による「さいたまネクスト・シアター」を旗揚げ。演劇界をけん引し続けた生涯に、幕が下ろされた。

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