平原綾香 13年でたどりついた境地
歌手の平原綾香(32)が21日、埼玉県和光市民文化センターから36公演に及ぶ全国ツアーをスタートさせる。中島みゆき、玉置浩二、徳永英明、財津和夫ら9人の豪華アーティストが愛をテーマに書き下ろした9枚目のアルバム「LOVE」を引っさげて、“愛を伝道する旅”となる。2003年に「Jupiter」でデビューして13年。自らの歌声を追い求め「何が一番大切か」にたどりついた境地とは。
全国ツアーで届ける新アルバムは、毛筆でしたためたラブレターをきっかけに生まれた。日本を代表するソングライターたちに「あなたが大好きです。どうか愛をテーマに曲を書いてください」とありったけの思いをつづり、完成に至った。
「初めて他人に楽曲提供した」という徳永は同時期に脳血管性の持病を手術していた。そんな中、書き上げた「鼓動」には「生きる力 生きようとする気持ちは何よりも強いんだ」と、自らを奮い立たせる決意を込め、平原に託した。「一生大事に歌います」と平原も誓っている。
今作で10編の愛を濃厚に歌い上げた平原だが、ラブソングから“逃げた”過去がある。03年に「Jupiter」でデビューしたが、当初はラブソングを発売する予定だった。しかし同年9・11に米同時多発テロが発生。「世界が混沌とした状況で恋愛は歌えない」と急きょ変更した。
クラシックに日本語詞をつけたデビュー曲は大ヒットした一方で“カバー歌手”というレッテルを貼られ「これでよかったのか」と葛藤にさいなまれた。しかし、翌04年に新潟中越地震が起きた際、被災地のラジオ局に同曲へのリクエストが殺到。「癒やしと共感。歌う上で何が一番大切かを新潟の人から教えてもらい、迷いがなくなった。この体験がなかったら今の私はない」と話す。
祖父はトランペット、父はサックスの奏者。音楽一家に生まれた歌姫。意外にも「小さい頃は引っ込み思案。声も低くて、学芸会では『ギーッ』って開く音を出すドアを演じた」という。音楽大学ではサックスを専攻し、歌手になった今でもボーカルは独学だ。「うまさより、自然体で泣ける歌を歌いたい」と求道している。
歌声と同じものを結婚相手にも求める。「ありのままの男性がいい。格好つけても伝わらない」とニッコリ。「30代のうちに結婚したい。育児日記のブログを読んでシミュレーションしている」と花嫁願望を強調する一方で「自分のことでまだ精いっぱいなのに、他人の面倒なんて見られない」とも。最愛のパートナーもボーカルと同じくゆっくり探していくことになりそうだ。