選挙特番のテレビ欄を分析してみた 日テレジャニーズ票狙い?、柔らか路線のフジ…
参議院議員選挙が投開票日を迎えた。各党、候補者が繰り広げた18日間に及ぶ選挙戦の審判が下されるが、各放送局も選挙特番で、し烈な視聴率争いを展開する。その前哨戦は、新聞のテレビ欄から始まっている。
各局、特番は開票が始まる午後8時の数分前から態勢が判明する深夜まで続く。その分、テレビ欄の番組案内のスペースも広い。最も広いNHKが34行、最も狭いのテレビ東京でも20行あり、1行10文字だから、200字~340字のアピール合戦。内容は番組の“売り”と直結しており、各局宣伝部の腕の見せどころというわけだ。テレビ欄の左から順番に各局の番組案内を分析してみた。
まずはNHK。「参院選2016開票速報」という、そのまんまのタイトルが表すとおり、番組案内も「王道」そのものだ。「日本の政治はどこへ向かうのか?有権者の審判が下る参議院選挙」に始まり、「18歳選挙権」「自公と野党4党が対決」「ネット選挙も進化」と、今回の選挙のキーワードが変化球なしに並ぶ。
締めくくりは「全国の選挙区と比例最終議席が決まるまで」。放送時間は午前4時30分までと民放を圧倒しており、本来はこれが最大の売り。NHKの面目躍如たるポイントだが、さすがに月曜の明け方までお付き合いしてくれる視聴者はあまりいないと、控えめにしたか。
続いて日本テレビの「ZERO×選挙2016」。何と言っても嵐の櫻井翔が初めてフル出演するのが最大のアピールポイントで、NEWSの小山慶一郎とともに“ジャニーズ票”の総取りが狙いだ。さらに、桐谷美玲、ピース又吉直樹と若者に人気の「ニュースZERO」のキャスター陣が総動員される。
29行ある番組案内もひたすらキャスター推し。「家族で楽しむ選挙特番」と打ち出し、4行目から彼らの名前を「“ ”」で強調して、1人1行ずつ紹介。続いて「(1)櫻井18歳選挙分析」「(2)小山“革命”政党へ」とナンバリングしながら、各タレントが何を取材、報告するかをつづる。実際に投票率が高い高齢層が興味を引くかは疑問だが、割り切っている。
TBSは「激突選挙スタジアム」。午前2時30分までという放送時間も、33行という番組案内も、NHKに次ぐ2位。何より他局があまり触れていない「憲法改正は?」をタイトル直後の「出口調査一挙公開!当落すべて見せます!」より前に持ってくるあたりに、「報道のTBS」の矜持(きょうじ)をのぞかせる。しかし、その次に「AKB48総選挙第3位松井珠理奈が見た選挙」と18歳特別リポーターに任命したアイドルの名前を配置しており、どっちつかずの印象も。初の総合司会を務める恵俊彰は文末に登場する。
異色なのがテレビ朝日「選挙ステーション」だ。放送時間も0時10分まで、番組案内も24行と2番目の短さだが、いきなり「番組も“公約”します」という書き出しから「一、独自の出口予測と開票をどこよりも速く正確にお伝えすること」と8つの公約を並べる。しかし、内容は「富川悠太アが現場でしっかり取材すること」「その取材によって18日間の“喜怒哀楽”選挙の裏側をたっぷり皆様にお伝えすること」「選挙に関心がない人にも面白い番組であること」とざっくり。看板番組「報道ステーション」を母体としているだけに“無党派層”の取り込みより、番組視聴者の支持に期待しているようだ。
テレビ東京は「池上彰の参院選」。毎回高視聴率をたたきだし、“池上無双”という言葉さえ生まれた選挙特番の風雲児は、番組名から案内まで、シンプルに“池上推し”。放送時間も6局で最短、番組案内も20行と一番コンパクトだが、姿勢は一貫している。
「本家“家族で楽しむ選挙特番”遠慮なく聞く生中継」とプライドをのぞかせると、「宗教…信濃町探訪」「名誉会長の近況を聞く」と、創価学会へのガッツリした取材を示唆。続いて「神社本庁」「赤旗」と、これまで比較的タブー視されてきたワードを羅列。つまりは、そこに池上無双が直撃したということなのだろうから、もはや選挙という枠を越えて「やりすぎ都市伝説」のノリ。興味はそそる。
最後にフジテレビ。「FNNみんなの選挙」というタイトルからして、柔らかい番組カラーをにおわせる。番組案内にも18歳選挙参加がらみでは人気モデルでタレントの藤田ニコルを出したり、「WHY?日本の選挙ジェイソン一刀厚切り」と米国人お笑いタレント、厚切りジェイソンが登場したりと、バラエティ色は強そうだ。ただ「見えた!選挙の真実(1)あの政党の本丸直撃(2)改憲の裏に注目組織(3)常勝マシンに異変?!」とイマイチ、具体性に欠けるのが難点か。午前1時55分までと放送時間が長めにも関わらず、案内は26行と短めなのも気になった。
特番の“当落結果”は、11日には視聴率で表れる。テレビマンの選挙は夜が明けても続く。(放送時間、テレビ欄は関東地区に準拠)