美内すずえ氏「ガラスの仮面」秘話明かす 最終回は20年前完成も続行宣言に拍手
連載40周年を迎えた少女漫画「ガラスの仮面」の作者、美内すずえ氏(65)が17日、大阪市内でトークイベントを行った。1975年12月にスタートして以来、単行本49巻、累計5000万部超の人気作品について、美内氏はすでに20年前に最終回は完成させていることを明かすも「皆さん、ホントごめんなさいね」と笑顔でまだまだ連載続行を宣言。集まった女性ファンから安堵の拍手が起こる中、長期連載の数々の秘話も明かした。
質問コーナーで司会者から「一番多い質問、お分かりですか」と聞かれると、美内氏は立ち上がり「実は最終回は20年前にできてるんです。ラストシーンの構図もセリフも全部書いてて、早く現実化したいんですけど」と明かした。ただ「だけどね、ちょっと置いとこう、他に行こうで、なかなかそこに行きつかなくて。(最終回を)あきらめたわけじゃないんですけど、ホント申し訳ありませんね」と微笑み、会場は笑いと拍手が起こった。
大阪の下町で育った。幼少時から貸本屋に入り浸り、母親から漫画を読むことを禁じられたため「なら自分で漫画を書けば、誰にも文句を言われない」と漫画家を志し、16歳でデビューした経緯を明かした。「だから今やってることは、好きでやってることの延長線なんですね」。
24歳の時に、幼少時に見た映画「王将」の主人公・坂田三吉のような女の子を描きたいと考え、以前に短編を書いた「演劇」をテーマにすることに。こうして「ガラスの仮面」が誕生した。
ただ「演劇をテーマにしたのは最大のミスでしたね」と美内氏。「主人公が新しい作品に挑戦するたび、劇中劇のストーリーや舞台構成をイチから作り上げて、どんな小さな芝居でもセリフまで考えますから、手間がかかる。通常の3倍は労力がかかるんですね」
長期連載ならではの苦労も。「ファッションやスカートの丈にしても、全てにおいて流行は取り入れない。定番で」と決めていたが、連載当初に登場していた黒電話は、やがてテレホンカード時代を経て、携帯電話の時代に。「さすがに今の時代にテレホンカードは…と、覚悟を決めて」と作品に携帯電話を登場させたところ「予想以上のブーイングが来ましたね」と苦笑いで明かした。
「ガラスの仮面」を連載するまでは、あまり演劇になじみが薄かったが、連載開始後は観劇が「最高の取材の場所」となった。気に入った公演なら、20日間程度ある公演期間の全ての昼夜公演を見るようになったといい、「例えばラブシーンを毎日見てると、『本当はこの2人、仲が悪いな』とか分かるようになりますね」とニヤリ。
9月には東京、大阪で舞台「ガラスの仮面」(主演・貫地谷しほり)が上演される。これまでも88年の大竹しのぶをはじめ「イメージを大切にして、この役者さんなら任せられる」と思える女優にだけ託してきたという。もちろん何度も観劇するが「セリフも全て、自分が一番分かってるはずなのに、いつも同じ場所で泣いてしまうんですよね」と笑顔で明かしていた。
◆「ガラスの仮面」…平凡な少女だった主人公・北島マヤが、大女優・月影千草によって天才的な演劇の才能を見いだされ、ライバルの姫川亜弓と主役の座を競いながら、苦難を乗り越え成長する物語。