宝塚歌劇団退団者「白」の秘密と伝説のパレード
東西の宝塚歌劇でトップスターのサヨナラ公演が上演されている。本拠地の兵庫・宝塚大劇場では星組トップスター北翔海莉(ほくしょう・かいり)&トップ娘役・妃海風(ひなみ・ふう)のサヨナラ公演「桜華に舞え/ロマンス!!」が26日に開幕し、東京宝塚劇場では月組トップスター龍真咲(りゅう・まさき)のサヨナラ公演「NOBUNAGA/Forever LOVE!!」が佳境を迎えている。
龍が退団する9月4日に東京宝塚劇場前が、北翔が別れを告げる10月3日に宝塚大劇場が、全身真っ白い格好をした人たちで埋まる。宝塚歌劇団のトップスターの退団パレードで数千人のファンクラブの人たちが、おそろいの白い服に身を包み、スターをガードする姿は壮観だ。
だが宝塚歌劇団には公のものは『宝塚友の会』しかなく、白い服に身を包んでいるのは、スターの私設ファンクラブだ。退団の日には、スターの愛称などが書かれた「会服」と呼ばれる白いおそろいのTシャツやパーカーなどの衣裳を身につける。スカートやパンツなどのボトムは自由だが、色はもちろん白。夏場の退団公演の場合はそろえやすいが、冬場の場合、コートやブーツも白にすることが多いため、苦労が多いという。
もともとTシャツなどをそろえることはあったが、色が白に限定されるようになったは平成になってからだという。『ベルサイユのばら』で初代オスカルを演じた榛名由梨は、1988年(昭和63年)12月31日付で卒業しており、昭和最後の退団者となる。千秋楽ではファンは白ではなく、ピンクの揃いの衣裳で見送った。榛名のマネジャーを務める実妹の山下淳子さんは「(会服が)白の方も多かったけど、決まっていたわけじゃなかった。退団者のファンクラブが白一色になったのは、榛名が辞めた後からです」と証言。「榛名の後に辞めたトップさんの会が白を着て、それを真似て以来、白になったようです」と平成になってから白が退団者の色になったいう。
先日退団発表した宙組トップ娘役・実咲凜音(みさき・りおん)も、退団会見には白いワンピースで登場。「退団の会見ですから。(白い色は)決めていました」と劇団内でも退団カラーとして定着している。
また退団するスターは千秋楽の10日前から、白に染まる。10日前から化粧前(舞台化粧用のドレッサーで使用する上掛けなど)が全て白いものに取り替えられる。これらはファンクラブが準備することが多い。さらには到着の名札や下駄箱などをも退団者の同期が白く飾り付け、楽屋は退団ムード一色になり、カウントダウンが始まる。
千秋楽後は、白い衣裳のファンの間を、スターが車でパレードする。外車のオープンカーなど豪華なものが多いが、なかでも伝説となっているのが、最近はセレブキャラで人気の、宙組トップスターだった大和悠河だ。
なんと全面をスワロフスキーで埋め尽くされたベンツで、遠目にもキラキラと光り、ひときわ目を引いた。これはデパートに展示しているのを見た大和が、「これすごいね」と何気なくいった一言をファンが覚えて準備したという。「退団のときは忙しすぎて、何がなんだかわからなかった」という大和。だが「ファンも泣いてくれて、心が一つになって。夢のようなあんな幸せなことはない。車のパレードのときマックスでした」と振り返る。
9月4日の東京宝塚劇場10月3日の宝塚大劇場。両日、劇場前は真っ白に染まる。