ロンブー淳が語る“タブー破り”の神髄 「怒られること」のススメ
昨今の芸能界では、お笑いタレントの「コメンテーター化」が目立つ。その流れを作った1人が、ロンドンブーツ1号2号の田村淳(42)だろう。約8年前からツイットキャスティング(ツイキャス)を利用するなど、SNS等を通じて自身の思いを広く配信。9月12日には、テレビ局「TVathushi」が開局される。
そんな淳が8月、高校生を対象としたオンライン講義イベント「スタディサプリLIVE」で講師を務めた。淳は冒頭、「怒られることを好んでやってほしいんです」と発言。“タブー破り”のススメを説いた。
その理由として「うまく怒られた方が自分の世界が広がる。『ここまでは大丈夫』っていうギリギリのラインがわかるんです。怒られないようにしようとするというのは、自分の活動できる範囲を勝手に制限しているってことです」と説明。髪型や髪色、バンド活動など、所属事務所から怒られ続けた自身の芸能活動を列挙しながら、熱く語った。
一見、破天荒に感じられる淳の言動だが、その裏には明確な意識がある。それは「将来の日本に対する不安」だ。淳は「僕は老人にベット(賭けること)しない。今の世の中は老人にベットしてるけど、僕は若者にベットする」と明言。「タレント業やってたら、お年寄りにベットするのが得策なんです。大きな支持層があった方が、スポンサーさんもテレビ局さんも喜ぶし。だけどそれだと、新しい文化は生まれないと思っている」と意図を口にした。
日本が抱える閉塞感の原因として、若者の行き詰まり感を挙げる声は多い。13年には、欲求を表に出さない若者を総称する「さとり世代」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされた。淳も「リスクを冒さないというよりは、冒すことがバカバカしいと思ってるんですよ。きちんと生きるために情熱を注いで、それに見返りがある空気感があれば、みんな注ぐと思うんですよ。リスクしかないと、注がない」と分析し、「法律から逸脱してなくて、やりたいことを自由に表現している人は、極力応援したいと思う」と話した。
リスクに挑戦することで自身のポジションを確立した淳にとって、若者の“煮え切らなさ”が歯がゆく思える部分があるのだろう。そして淳の「怒られ方」には、やはり確固たる基準があった。「怒るのにも、俺は例外がないことをただやってるだけだから、怒る人たちもしっかりと怒れないんですよ。怒る時って、例えば『赤信号を渡っちゃダメ』ってきちんとした理由があって怒るのに、例外がないことをただただやってるだけだから、怒りが弱い。そんな時は、進んでいいと思っちゃってて。事務所も、本当に俺のことが大切だと思ったら、絶対に止める。それをしないということは、進んでいいのかなって解釈してるんです」。怒られ続けた経験から身につけた、1つの処世術とも言えるだろう。
だからこそ、最低限のルールを守ることは意識している。淳が悔やんでいるのが、12年10月、自身のバンド「jealkb」のチケットの路上販売を生配信中、駐車違反で取り締まられ、警官と口論した事件だ。「国家権力には逆らっちゃダメだなって。警察を生配信で映しちゃいけないっていうのがわかった」と反省を口にした。
だが、それで終わらないのが、淳のパワーだ。「だから、そこまでギリギリ行ける人になったんですよ。あのニュースだけ見てたら、タレントが生配信するというのはリスクしかないって思って、やらなくなるんです。悪いことしたな、俺しか得してない」とニヤリ。失敗から学んで武器を増やすことこそ“タブー破り”の神髄なのだろう。
常に戦う必要はなくとも、いざという時には牙をむける、そんな若者が増えることを、淳は望んでいるように感じられた。(デイリースポーツ・福島大輔)