ASKA 陽性反応なのになぜ不起訴に 検察の思惑を「行列」北村晴男弁護士が分析
東京地検は覚せい剤取締法違反(使用)容疑で逮捕された歌手のASKA(本名宮崎重明)=(58)を嫌疑不十分で不起訴とした。尿から陽性反応が出たのになぜなのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士は、地検が裁判において100%の勝利を見込むことができなかったのではと指摘。無罪の可能性が多少でもあるため起訴を見送ったという。その背景には「いつでも立件することができる」と考えている可能性があると分析した。
ASKAは逮捕前に警視庁に任意提出し、覚せい剤成分が検出された液体について逮捕後、「あらかじめ用意したお茶を採尿カップに入れた」と供述。地検もASKA本人の尿と立証できないと説明している。
「お茶を入れた」という供述について北村弁護士は「警察は意表を突かれたのではないか。尿の任意提出を受ける段階では全く予想していなかったと思う」とASKAの言動の意外性を指摘した。
警察としてはASKAに尿の任意提出を求めた際、覚せい剤が含まれていないことが明らかな液体にすり替えて提出することを恐れ、背後からASKAの排尿動作を妻とともに注意深く見守ったはず。強制ではなく任意なので、本人の意思に反して正面から観察することは難しかった。ASKAの「お茶を入れた」という供述は、結果的にこの点を突いたことになる。
しかし、お茶から覚せい剤の成分が検出されることはあり得ないのでそんな言い訳は誰も思いつかない。地検としては、覚せい剤を使用しているものの「使用していない」と思いたい人が、任意提出された尿から覚せい剤反応が出たと知らされて、「自分は使用していないはず」という思いと、陽性反応が出たという客観的事実をすりあわせた結果、無理やり出てきたストーリーに違いないと考えたのではないかと北村弁護士は分析した。
従って、有罪立証するためには提出された液体がASKA本人の尿であると科学的に立証することが最も的確な方法だった。ただ、この点について警視庁は、液体が微量だったため最初の鑑定で使い切ったことを明かしている。
有罪立証するためにもうひとつ考えられるのは、ASKAが尿を採尿カップに出している現場に立ち会った警察官と妻が出廷し、「他の液体を入れることは不可能だった」と証言することだ。たとえ採尿動作を後方から見ていたとしても、他の液体を入れようとすれば不自然な音や動きが生ずるもので、警察官や妻がそのことに気づかないはずがないことを北村弁護士は指摘。「お茶を入れた」という供述を覆す可能性は十分にある。
それでも起訴を見送ったのは、ASKAが「お茶を入れた」と供述したことにより無罪となるリスクがほんのわずかでも生じたからだという。検察としてはそのような状況で起訴する危険を避けた。なぜなら検察は、内偵すればいつでも「使用」や「所持」の現場をおさえることができると踏んでいるものと思われるからだという。今後、ASKAへのマークは厳しくなることが予想される。
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北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。