前田健さん虚血性心不全 若い人も注意
ものまねタレントの前田健さんが44歳という若さで亡くなった。路上でおう吐して意識を失い、救急搬送してからわずか1日半。意識が戻らぬままだった。働き盛りの40代男性の命を突然奪った「虚血性心不全」という病気はどういうものなのか。兵庫県芦屋市の「松本クリニック」松本浩彦院長に聞いた。
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44歳の芸人さんが、夕食直後に路上で倒れ、その後亡くなったという事ですが、死因は虚血性心不全と発表がありました。通りかかった医大生が心臓マッサージとAED(除細動)を施したそうですので、その時点で少なくとも心室細動という、極めて危険な状態にあった事は間違いないでしょう。
心臓は身体中に血液を送り出すポンプですが、心室細動を簡単に言うと、心臓が止まって痙攣している状態です。
もともと不整脈があった、昼に体調不良を訴えた(テレビ朝日の番組収録中)ということですから、お昼の時点ですでに狭心症の発作を起こし、その後、心筋梗塞に進行したというのがいちばん考えやすいです。
お昼の体調不良がおさまった時点ですぐに病院に行っていれば、あるいは助かったかもしれません。夕食に食べたというパスタは今回は無関係でしょう。
心臓には冠状動脈という3本の太い血管が取り巻いており、これが心臓そのものに酸素や養分を送っています。この血管はちょっとした不摂生ですぐに細くなったり詰まったりします。血液検査で、例えば悪玉コレステロールがずっと高かったりすると、若い人でも動脈硬化が思いのほか進んでいたりします。
動脈硬化で冠状動脈が細くなり、心臓に充分な血液が行き渡らない時に狭心症が起こります。血液が行き渡らない=虚血性、と呼ばれる所以です。すぐに再開通すればいいのですが、いつまでも血液が停滞したままだと、これが心筋梗塞となり、命に関わる重篤な状態になるのです。
心不全という言葉は、心臓が仕事を全うできない状態という意味で、その原因は不整脈でも狭心症でも心筋梗塞でも、とにかく心臓が正常に働かないことを指します。放置すれば当然、心臓はそのまま停止します。
狭心症の痛みというのは、ちょうど左胸の辺りをわしづかみされるような感じだと言います。右手で左の胸をかきむしるような姿勢で倒れていたのなら、それは間違いなく心筋梗塞です。
不整脈や、たまに感じる左胸奥の痛みには、重大な病気が隠れている可能性があります。そんな時は放置せず、専門医の診断を受けることをお奨めします。(松本浩彦)