田中みな実 今年30歳の目標は「結婚」夜遊び苦手…午後10時には布団へ
フリーアナウンサー・田中みな実(29)-その名を検索すれば「ぶりっこ」「小悪魔」と悪口のオンパレードだ。だが、深く仕事を共にする人の“みな実評”は「サバサバしたいい子」「真面目」と正反対。その実像はどこにあるのか。10月に始まった、初の帯番組MCを務めるTOKYO MX「ひるキュン!」(月~金、後0・00)のスタジオを訪ね、女子アナ論、結婚観までを聞いた。
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番組開始4日目、今月6日に取材した。パートナーを組む日替わり男性MC、俳優の蟹江一平は、初めての生放送の現場で緊張気味。田中はそんな“相棒”をリラックスさせつつ、耳打ちでアドバイスする。「2分押してます!」というスタッフの声にも動じず、てきぱきとフリップや台本を確認した。
「気づいたら1時間たっている状態で、まだ急ぎ足になっているかも。ゆったり見てもらいたいので、詰め込みすぎず、走りすぎず、視聴者の方を考えていきたい」
フリーになって初の帯番組MC。“あの田中みな実が”と、放送前から注目を集めた。実際の現場では、座長公演に臨む主演女優の風格さえあるが、本人は“自分色”を出すつもりはないという。
「私自身は本来、色はそんなになくて、周りの人に作ってもらうタイプ。『サンデージャポン』では爆笑問題さんが面白がってくれて、ああいうキャラクターが取りざたされたけど、今回は情報番組なので、自分の色にこだわりません」
自身の性格を「心配性で慎重派」と分析する。意外なようだが、新番組開始以降の1日のスケジュールにその一端がうかがえた。
起床は午前7時。毎朝のルーティンから始まる。
「アナウンサー研修の教本にもある『ういろう売り』という口上で発声練習をします。リンゴの皮をむきながら『拙者親方と申すはお立ち会いのうちに…』と。一人暮らしなので、現場に入るまで誰とも口をきかないので、声が出にくくなるのが怖い。局アナの頃も毎日やっていました」
局入りは午前9時。番組開始3時間前とずいぶん早い。
「不安なので、スタジオには一番早く入っていたい。打ち合わせにも全部参加して、こういうフリップがあると分かりやすいとか、出演者として意見をさせてもらうので」
というわけで、夜は午後10時には布団へ。華やかなイメージの女子アナ像とはかけ離れた地味な生活だ。
「夜遊びはそもそも苦手。たまに友達と飲みに行くことはあっても毎晩じゃ疲れちゃう。基本、うちでご飯を炊く。規則正しい生活が合っているんです」
人気番組を多数任されていた入社5年目、27歳の若さでTBSを退社した。女子アナには“30歳定年説”という言葉があるが、異例の早期退職だった。
「毎日、楽しくお仕事をさせてもらって、環境にもなれる中で、このままずっと楽しいままで、30歳までやっていいのかなという疑問がふと生じた。外で厳しい環境でやってみるのも一つの選択肢かなと思った」
そう理由を語ったあと続けた。「そして、本当にフリーは厳しかった」。
「局アナは、小さな枠の世界で、年功序列の中にやりたいことが順番にやれるけど、フリーは広い世界。私がやりたいと思っても、実現するのは難しい。局アナじゃなくて、フリーの私を使う意味は?となったときに、選んでもらうために自分のセールスポイントが必要だけど、私は見つけていなかった」
フリーアナも戦国時代と言われる。局アナからの転身組に加え、近年は女子アナ専門の芸能プロダクションも増え、大学ミスコン優勝者が多数所属する。
「飽和状態と週刊誌で書かれるのを見ますけど、意識はしていない。仕事の種類も多種多様になっている。ニュースに特化している人もいれば、タレント的な人もいる。どのジャンルで自分と比較していいかも分からないし、みんな『どこもあてはまらない』と思っているはず」
大事なのは他人との比較ではなく、いかに自分を高められるか。そう信じて2年間やってきた。だから最近“大物アナ”がフリーになったニュースを聞いても動揺は…。
「全然なかったです。よくライバルは誰?カトパン(加藤綾子)?と聞かれるけど、私にはライバルも目標にしている人もいません」
“女子アナ”と呼ばれる、日本のテレビ界における特異な存在。会社員でありながらタレントと同等か、それ以上に芸能ニュースをにぎわせる。そのド真ん中から少し立ち位置を変えた今、少しだけ客観視できるようになった。
「まず、アナウンサーはベースがちゃんとしている。研修をきちんと受けて、ニュースもちゃんと読める。私もTBS時代はニュースを読んだり政治を扱う番組もやっていた。でも普通にニュースを読んだり、情報を伝えるのはできて当たり前。評価されたり知名度が上がることはない。なのに間違えたりすると取りざたされ、注目される。私はその恩恵を受けていた側だけど、不思議で不条理な世界ですよね」
田中のナレーションやアナウンス技術の高さは、業界では知られている。安定感があり、聞き心地のよい声は資質と努力が相まって培われた。
「アナウンサーの訓練をしてきたからには、培った技術を押しつけがましくなく、放送で出していきたい。今回の番組はすごくいい機会をもらえた」
アナウンサーとしての原点は「サンジャポ」と言う。新入社員の09年10月から退社した14年まで出演。人気者となり「みんなのみな実」というキャッチフレーズも誕生した。アイドルアナとしてブレークした半面、世間ではバッシングも激しかった。そんな時も、スタッフが荒っぽくも優しく支えてくれた。
「スタッフルームに行くと『おい、また載ってたぞ』とあえて載っている週刊誌を見せてきた。嫌なことも共有して楽しめるスタッフに、アナウンサーとしてはもちろん、心も強くしてもらった」
どんな悪口も笑い飛ばしていたが、最後の出演回で、自分でも気づかなかった思いが決壊した。
「太田(光)さんが『20代そこそこの子が“嫌いなアナウンサー1位”とか書かれて、つらかったと思う。それにめげずに笑顔でやっていた』と話された時に、初めて涙があふれてきた。それまでは傷つく余裕もないほどに仕事に追われて、悲観する間もなかったけど、言われて初めて、蓄積された気持ちがあふれた」
その放送回のビデオは今や「お守り」になっている。
「今でもめげそうになった時に見返す。すごく泣いて『うん、大丈夫。サンジャポのみんなは応援してくれている』って、スタッフさんの顔を思い浮かべる。古巣には恩があります」
11月23日には、フリー転身の決断の際に見据えた30歳の誕生日を迎える。30代で実現したいことを尋ねると、自らデリケートな部分に触れてきた。
「結婚。したいですね。守るべき家庭ができたら、人としてもっと厚みが出ると思うから。一人でいると少し高い果物を買っても、物理的には満たされるけど、心が満たされない。子供もほしい。理想の相手は、自分の家族を大事にしていて、仕事を楽しくやっている人。結婚相手が仕事やめてくれって言ったらやめます。あーでも、旦那がいつどうなるか分からないから、生活費を稼げるだけのスキルは保っておかないと」
結婚観にも心配性をのぞかせた。
◆田中みな実(たなか・みなみ)1986年11月23日生まれ、米ニューヨーク出身。青山学院大卒。2007年、ミス青学の準ミスに。09年4月、TBS入社。同期は江藤愛アナ。「サンデージャポン」内で10年から始まった「情報ライブみな実屋」コーナーのリポーターとなり人気に。13年1月からは青木裕子アナを引き継ぎ、5代目アシスタントに就任。14年9月、TBSを退社。宮根誠司、羽鳥慎一らが所属する大手芸能事務所テイクオフに所属。現在は「有吉ジャポン」「ジョブチューン」などにレギュラー出演。身長1メートル53センチ、血液型A。