戦後の日本文学を代表する作家の一人で、文明批評にも鋭い洞察力を発揮した文化功労者の安岡章太郎（やすおか・しょうたろう）さんが２６日午前２時３５分、老衰のため東京都の自宅で死去した。９２歳。高知市出身。葬儀は近親者で済ませた。喪主は妻光子（みつこ）さん。

　慶応大在学中に召集され満州へ派遣されたが、胸部疾患で内地送還になり終戦を迎えた。戦後は脊椎カリエスの闘病を続けながら執筆。５３年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞を受賞した。文壇では吉行淳之介氏、遠藤周作氏らとともに「第三の新人」と呼ばれ、野間文芸賞、日本文学大賞などを受賞。芥川賞などの文学賞の選考委員を長く務めるなど、文壇の中心を担った。批評家としても知られ、「アメリカ感情旅行」「僕の昭和史」などを残した。日本芸術院会員。