山本兼一さん死去「利休-」で直木賞

 直木賞作家の山本兼一(やまもと・けんいち)さんが13日午前3時42分、肺腺がんのため京都市内の病院で死去した。57歳。京都市出身。2009年に直木賞を受賞した「利休にたずねよ」は映画化され、昨年カナダのモントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受けるなど話題となった。葬儀・告別式は16日午後1時から京都市北区の公益社北ブライトホールで。喪主は妻英子(ひでこ)さん。

 山本さんは同志社大を卒業後、出版社や編集プロダクションを経て2002年に「戦国秘録 白鷹伝」でデビュー。04年、安土城の築城をテーマにした「火天の城」で松本清張賞。09年には千利休の秘めた恋と生涯を描いた「利休にたずねよ」で直木賞を受賞した。

 妻英子さん(51)によると、山本さんは一昨年10月に肺腺がんが判明し入院。家族や親しい編集者にしか伝えず、退院後も闘病生活を送りながら執筆活動をしてきたが、昨年12月中旬に病状が悪化し再入院していた。

 山本さんは雑誌「中央公論」に小説「平安楽土」を連載しており、病床で酸素吸入をしながら執筆。12日には原稿用紙30枚分の次号の原稿を、ファクスで担当編集者に送信した。編集者がファクスを受け取ったのは同日午後10時6分。亡くなる約5時間半前だった。英子さんは「連載の途中で無念だったと思うが、最期まで病気と闘った。彼の情熱的な小説は彼そのものだった」と話した。

 映画「利休にたずねよ」に主演した歌舞伎俳優の市川海老蔵(36)は「表現者としての熱い思いを、原作、映画『利休にたずねよ』を通して教えていただきました。感謝の思いが尽きません」とコメント。ブログでは山本さんに出演を口説かれたことを明かし、「父との最後の共演をさせてもらえたのもこの作品があったからこそ」「とても悲しいです」とつづった。

 映画「火天の城」「利休‐」の監督を務めた田中光敏さんは、山本さんから昨年末に電話で「もう1作、必ず面白い小説を書くから、3部作にしようね」と言われたことを明かし「亡くなったことにまだ実感が湧かない」と話した。

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