渡辺淳一死去、80歳「失楽園」生みの親

 「失楽園」など男女の濃密な性愛を描いた恋愛小説や、医療を題材にした作品で知られる直木賞作家の渡辺淳一(わたなべ・じゅんいち)さんが4月30日午後11時42分、前立腺がんのため、東京都内の自宅で死去した。80歳。北海道出身。葬儀・告別式は近親者で行った。後日、お別れの会を開く。喪主は妻敏子(としこ)さん。映像化された作品も多いだけに芸能界にも大きな衝撃が走り、親交が深かった俳優・津川雅彦(74)はデイリースポーツの取材にその死を惜しんだ。

 渡辺さんは札幌医大卒業後、同大の講師をしていたが、和田寿郎教授による心臓移植事件を批判したことがきっかけで辞職した。専業作家を目指して上京し、事件を題材にした「小説心臓移植」(後に「白い宴」)を発表して話題となった。

 経験を生かした医療小説を多く手掛け、1970年に「光と影」で直木賞。80年に野口英世の人生を描いた「遠き落日」と「長崎ロシア遊女館」で吉川英治文学賞を受賞した。

 80年代からは愛と性を正面から描いた「化粧」「ひとひらの雪」「化身」などの恋愛小説を立て続けに刊行。中年男女の不倫をテーマにした97年の「失楽園」は大胆な性描写で話題となり、250万部を超す大ベストセラーに。「失楽園」は流行語大賞に選ばれた。2006年の「愛の流刑地」では命を奪うほどの狂おしい愛を描き、略称「愛ルケ」としてブームを起こした。

 エッセーも人気で、100万部超のヒットとなった07年の「鈍感力」は、当時の小泉純一郎首相が発言で取り上げたこともあって流行語になった。

 「失楽園」「愛の流刑地」など映画化、ドラマ化された作品は多数。海外での翻訳出版も多く、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は「中国において最も注目され、最も歓迎された日本文学の巨星の一つだった」と惜しんだ。

 2003年に紫綬褒章と菊池寛賞。直木賞や吉川英治文学賞などの選考委員を務めた。札幌市には渡辺淳一文学館がある。

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