日中文化工作の象徴だった「李香蘭」

 戦前には李香蘭(り・こうらん)の名前で女優、歌手として活躍し、戦後には参議院議員も務めた山口淑子(やまぐち・よしこ、本名大鷹淑子=おおたか・よしこ)さんが、7日午前10時42分、心不全のために都内の自宅で死去していたことが、14日分かった。94歳。

 戦中、満州発の大スターとして祭り上げられ、日中両国で絶大な人気を誇った李香蘭は、文化工作の象徴的な存在だった。音楽評論家の瀬川昌久さんは「内心ではじくじたる思いがあったかもしれないが、日本と中国が仲良くなって、平和になってほしいと願っていたと思う」と心中をおもんぱかる。

 「後から歴史を裁くことはできるが、その時点では女優として最善を尽くしたのだろう」と話すのは映画評論家の寺脇研さん。「映画史に残る女優は他にもいるが、近現代史に名を残す女優は彼女をおいてない」

 寺脇さんは日中関係が悪化している今こそ、彼女のように国境を越えて活躍する俳優を待望する。「日本のアニメや漫画が好きな中国の若者はいるが、あくまでも物。両国民の間に『人』が介在する意味は大きい。両国で愛される俳優が出てきてほしい」

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