鉄矢 名優の“孤高の孤独”かいま見た

 10日に83歳でこの世を去った名優高倉健さんの訃報は18日、芸能界に大きな衝撃と悲しみをもたらした。「幸福の黄色いハンカチ」で健さんと共演した武田は、都内で会見を開き、涙ぐみながら当時の思い出話を語り、孤高の俳優であるがゆえの「孤独」を明かした。

 武田が撮影の合間に「健さんは富士山だから。立っているだけで絵になる」と話しかけると、高倉さんは「富士山は寂しいぞ」と苦笑いした。武田が脚本・主演などを務めた映画「刑事物語」に高倉さんが特別出演した際には「お前は駆逐艦みたいでいいな。空母はつらいぞ。ジッと待っていなくちゃならない」とこぼしたという。

 私生活でも、1971年に故江利チエミさんと離婚した後は独身を貫き、家族に囲まれた温かい家庭を築くことはなかった健さん。「幸福の-」の作品テーマを武田に指導した際にもその孤独をかいま見せた。

 「テーマは“お帰りなさい”だ。人間にとって、家に帰ったときに奥から『お帰りなさい』という一言が返ってくるのが、どれだけ幸せなことか。それを山田洋次(監督)は描きたいんだ。少年のように語る健さんが実は“お帰り”がない家に住んでいたから、強く反応したんだなと印象に残っている」

 健さんの主演映画への出演は1度きりだったが、武田は「共演は1本で十分。健さんにとっては200本のうちの1本だけど、僕にはすべて。200本分の価値があった」と声を詰まらせた。

 またその死が、1週間以上明かされなかったことへも「健さんらしい」とポツリ。「高倉健という美意識や志が、弱さを見せず、鮮やかに残像のみを残して歩き去ってしまった。背中しか見送れなかったけど、後ろ姿に深く深く一礼をささげたい」としのんだ。

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