寅さん実家のモデル…団子屋女将が死去
映画「男はつらいよ」シリーズで渥美清さんが演じた主人公・車寅次郎の実家の団子屋「くるまや」のモデルとなった東京都葛飾区柴又の老舗団子屋「高木屋老舗」のおかみ、石川光子さんが11月28日に肺炎のため死去していたことが4日、遺族への取材で分かった。93歳だった。告別式は5日正午から葛飾区金町6の1の14、セレモニーホール島村会館で。喪主は長男・宏太氏。
長男宏太さん(62)によると、光子さんはこの店に生まれて10代半ばから店先に立ち、約80年間にわたり接客を続けてきた。世話好きで人情味にあふれ、緑やベージュの和服に白の前掛け、まとめ髪姿は、映画で寅次郎が「おばちゃん」と呼んだ叔母の車つねのモデル。柴又の名物おかみとして、地域の人には「おみっちゃん」の愛称で親しまれてきたが、11月23日に体調を崩して入院、そのまま他界した。
団子屋は映画ロケの際、渥美さんら俳優陣に控室や着替え場所を提供。50人ほどの撮影チームが寝泊まりすることも。光子さんは「映画がヒットしますように」との願いを込めて全員分の赤飯を炊き、渥美さんや山田洋次監督(83)にも必ず手料理を振る舞ったという。
1996年に渥美さんが亡くなった後も「寅さんはいつか旅から戻ってくる」と願い、渥美さんが撮影待ちの際によく座っていた席に「予約席」の札を置いた。
私的にもよく訪れていた山田監督は11月8日、寅さんの妹役、女優・倍賞千恵子(73)は同19日、石川さんと会っていた。山田監督は光子さんが亡くなった翌日に駆けつけて対面し、顔を寄せるようにして「いろいろありがとう。お世話になりました」と伝えたという。
告別式は5日に行われるが、喪主を務める宏太さんは、光子さんが常々口にしていた「何があっても店は開けるように」との教えに従い、店は休まないという。