「阿片戦争」「敦煌の旅」など、中国を舞台にしたスケールの大きい歴史小説や評論で知られる作家の陳舜臣（ちん・しゅんしん）さんが２１日午前５時４６分、老衰のため死去した。９０歳。葬儀は近親者のみで行い、後日、お別れの会を開く。

　１９２４年、神戸市の台湾人貿易商の家に生まれ、大阪外国語学校（現・大阪大外国語学部）卒。一時は研究者を目指したが、家業に従事後、本格的な創作に入り、６１年に「枯草の根」で江戸川乱歩賞を受け文壇に出た。推理小説からスタートした後、「阿片戦争」（６７年）など歴史的、社会的視点を深めた作品に取り組み、「青玉獅子香炉」で６９年に直木賞を受賞。

　旺盛な筆力で「敦煌の旅」（大仏次郎賞）や全１５巻の「中国の歴史」なども著し、２７巻の「陳舜臣全集」（講談社）がある。

　９０年代に入っても、吉川英治文学賞を受けた「諸葛孔明」や、ＮＨＫ大河ドラマの原作「琉球の風」などを発表。９４年の大作「耶律楚材（やりつそざい）」は、チンギスハンに仕えた天才的宰相の生涯を描き好評を博した。日本芸術院会員。

　９４年、講演の途中、軽い脳出血で倒れたが、執筆活動を再開。２００８年に２度目の脳出血を起こしリハビリに努めていた。１４年、自筆原稿などを集めた「陳舜臣アジア文藝（ぶんげい）館」が神戸市にオープンした。