クロ現に「重大な違反」、BPOが警鐘
NHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は6日、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表した。その中でNHKを厳重注意した総務省と事情聴取した自民党を「極めて遺憾」「圧力そのもの」などと厳しく批判した。BPOが政府・与党を批判するのは極めて異例で、放送業界でつくった第三者機関が権力の介入に強く警鐘を鳴らすかたちとなった。
BPOは番組について、視聴者に誤った事実を伝えた面は否定できないとし「報道番組で許容される演出の範囲を著しく逸脱した表現と言わざるを得ない」と指摘。NHKの調査委員会が「『やらせ』は行っていない」と結論付けたことは「視聴者の一般的な感覚とは距離があり、深刻な問題を演出や編集の問題に矮小(わいしょう)化している」とした。
検証委の川端和治委員長は記者会見で「番組はNHKのガイドラインにことごとく違反している」と話した。
NHKは、都内で会見し、板野裕爾放送総局長が「厳しい意見、ご指摘があったことは重く受け止めて、再発防止策で確実のチェックしていきたい」と述べ、現在進めている再発防止策について説明した。
また、意見書は、総務省がNHKに文書で厳重注意したことを「政府が個別番組の内容に介入することは許されない」と非難。自民党がNHK幹部を呼び出して説明を求めたことを問題視した。その上で「番組内容に関しては国や政治家が干渉するのではなく、放送事業者の自己規律やBPOを通じた自主的な検証に委ねる本来の姿に立ち戻るよう強く求める」と訴えた。
検証委は弁護士の川端委員長のほか、映画監督の是枝裕和氏、精神科医の香山リカ氏ら各界の識者で構成。5月から番組関係者の聞き取り調査などを進めてきた。