競馬界にも“海老蔵事件”が勃発した。ＪＲＡの武幸四郎騎手（３２）＝栗東・フリー＝が１９日早朝、京都市内の飲食店で殴られ、左頬骨を骨折。今週末の騎乗を全てキャンセルした。復帰時期は未定。被害届を受けた京都府警は傷害事件として加害者の行方を追っている。

　競馬界のエリートファミリーに衝撃が走った。父・邦彦、兄・豊はともにダービージョッキー。超良血の武家の四男・幸四郎が暴行を受け、顔面を破壊された。

　被害に遭ったのは京都市東山区の中華料理店。幸四郎は１９日午前４時過ぎ、ハシゴ酒のシメとして知人の男性と女性の３人で行きつけの店に麺類などを食べにきた。話が盛り上がっているところ、近くにいた客と口論になり、一方的に殴る蹴るの暴行を受けたという。知人は午前５時３０分ごろに１１０番通報。すぐに京都府警東山署の警察官が急行したが、店に到着したときにはすでに殴った客は逃走していた。

　中華料理店の店長によると加害者は４０～４５歳の男性で、複数で来店。「この店に２、３度来たことがある方で、双方ともかなり飲んでいるなという印象でした。大きな声がしたので厨房から出ると、幸四郎さんが頬を押さえていました。殴ったと思われる人は先に店を出て、連れの方が料金を支払っていました」と証言した。殴打された衝撃か、入店当初はかぶっていたキャップが床に転がっていたそうだ。

　幸四郎は京都市内の病院に運ばれ、精密検査の結果、左頬骨の骨折が判明。入院することなく昼前に東山署へ自力で出向き、被害届を提出した。関係者によると「一方的に因縁をつけられて殴られたから被害届を出した」と話しているという。

　幸四郎と加害者との間に面識はなく、馬券でやられた競馬ファンの腹いせではないもよう。加害者に中央競馬の人気ジョッキーとの認識すらあったかどうかも疑わしく、暴行に至った要因は３人の会話が癪（しゃく）にさわっただけの可能性が高い。京都府警は傷害事件として捜査中。中華料理店の前にあるコンビニエンスストアの防犯用ビデオをチェックするなど、加害者の割り出しを急いでいる。

　父の邦彦氏は酒豪で知られたジョッキーで、その血を受け継いだ武兄弟もかなりいけるクチ。祇園界隈の人間が「弟さん（幸四郎）が飲み歩く姿をよく見かけます」と証言するほどの酒好きだが、トラブルに巻き込まれたのは今回が初めてだ。

　骨折した幸四郎は２０日に小倉競馬で３鞍、２１日も小倉で２鞍騎乗する予定だったが、１９日の午前中に栗東トレーニングセンターの公正室に連絡を入れ、騎乗できない旨を伝えた。５鞍は全て乗り代わり。現在は自宅で療養中とのことだが、ケガの全治などは発表されておらず、復帰の時期は未定になっている。

　良血ファミリーの息子が酒席で殴られ、顔面を骨折し、仕事をキャンセルする‐。昨年１１月に歌舞伎界のプリンス・市川海老蔵が見舞われた事件が、そのまま競馬界に置き換えられたような今回の騒動。９月１０日の秋競馬開幕を前に、人気ジョッキーの傷害事件はＪＲＡに大きな衝撃を与えた。