【神戸新聞杯】森がマジェスティを菊へ
「神戸新聞杯・G2」(22日、阪神)
人馬の呼吸を合わせて大仕事を成し遂げる。平地重賞初挑戦の森一馬(20)=栗東・松永昌=が、マジェスティハーツとともに菊花賞(10月20日・京都)への優先出走権獲得を目指す。G1に出走する騎手は規定によりJRA通算31勝以上を挙げている必要があるが、デビュー3年目の鞍上は現在15勝で現時点では厳しい状況だ。馬にとっては一生に一度のクラシック参戦がかかる一戦。パートナーを大舞台に送り出すため、若武者は静かに闘志を燃やしている。
この一戦にかける思いは、きっと誰よりも強いに違いない。マジェスティハーツを駆る森が、菊の権利奪取に向けて静かに闘志を燃やしている。「馬の力を信じて乗りたい」と穏やかな口ぶりで意気込みを示した。
相棒とは入厩当初から調教をつけていた間柄だ。実戦で初コンビを組んだ2走前にいきなり500万下をV。続く前走の1000万下も好位からしぶとく抜け出して突破。2連勝と相性の良さを見せつけた。「前走よりも折り合いがつくようになったし、乗りやすくなっている。今の感じなら距離もこなせるでしょう」。2400メートル戦の今回、そして本番の3000メートル戦に思いをはせる。
ただし、馬が本番に立つことができたとしても、鞍上にはとてつもなく高い壁が立ちはだかる。規定により、G1に出走する騎手はJRA通算31勝以上を挙げている必要があるが、17日終了時点における勝ち星は15勝。騎乗は厳しい状況だ。「本番で乗れない可能性が高いにもかかわらず、僕を乗せてくださったのはありがたい」。厩舎、オーナーサイドへの感謝を口にした。
昨年11月に調教中の落馬により脳挫傷と頸動脈損傷に見舞われ、一時は生死の境をさまよったこともある。長期の戦線離脱は避けられないとみられていたが、驚異的な回復力で今春に復帰を果たした。平地の重賞挑戦は初めてとなるが、地獄を見たハタチの若武者に妙な気負いはない。「障害の重賞には乗っていますからね。常に馬の力をいかに引き出せるか、と思って乗っているんですが、今回もそういうつもりで」。自然体の構えで相棒を大舞台へと導くつもりだ。