【マイルCS】ラー常識破りの戴冠

 「マイルCS・G1」(17日、京都)

 電光石火の末脚だった。混迷のマイル戦線を制したのは2番人気のトーセンラー(牡5)。初距離をものともせず、悲願のG1初制覇を果たした。藤原英師は12年エイシンフラッシュ(天皇賞・秋)以来、JRAのG1・5勝目をマーク。なお、2着は3番人気のダイワマッジョーレ、3着には1番人気のダノンシャークが入った。

 常識破りの快挙だ。今春は3200メートルの天皇賞で2着に食い込んだトーセンラーが、半分の距離となる初めてのマイル戦で悲願のG1制覇。「ラーにとっても、武豊にとってもメモリアルのV。二重の喜びだね」と、会心の勝利に藤原英師は笑顔をはじけさせた。

 “一戦必勝”を厩舎のモットーとして掲げるトレーナーの戦略が見事に的中。中間はコースから坂路追いに切り替え、マイル仕様の仕上げを施した。「やってみないと分からない部分はあったが、対応できるように訓練してきた。馬も人もパーフェクトだったね」。道中は慌てず後方の内で待機。直線ではメンバー最速の上がり33秒3の切れ味を発揮した。「賛否両論あっただろうけど、スタッフを信じて、馬主さんが理解して、武豊が馬を信じて勝ち取った勲章です」と胸を張った。

 空前の災厄を経験した1頭だった。日本中に大きな影を落とした11年3月11日。皐月賞を控えていたラーは、放牧先である宮城県の山元トレセンで東日本大震災に見舞われた。何とか美浦を経由して栗東へたどり着いたものの、交通網のマヒにより、美浦までだけで15時間超の輸送。計り知れない疲労が心身に刻まれたことは想像に難くない。「長い時間をかけて復活してくれた。精神力も運もあると思う。動物ではあるが、勇気づけられた」と師は口元を結んだ。

 今後については流動的ながら、生産者で社台ファームの吉田照哉代表は「無理はしないけど、有馬記念(12月22日・中山)に登録だけはしよう、と話をした」と発言。頂点に立ったマイル戦はもちろん、これまで同様に中長距離路線も視界に入れていく構えだ。スピードとスタミナを併せ持つ5歳馬はどんな選択肢をたどっていくのか。興味は尽きない。

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