【有馬記念】池添オルフェ圧勝で有終V

 「有馬記念・G1」(22日、中山)

 歴史的な圧勝で締めた。オルフェーヴル(牡5歳、栗東・池江)が直線で独走状態に持ち込み8馬身差の有終V。6冠馬の馬上で池添謙一騎手(34)は、ファンに向けて高々と右手を突き上げた。波乱に満ちた人馬の物語は、最高の形でフィナーレを迎えた。

 後世まで語り継がれる歴史的名馬は、最終章でも伝説をつくった。直線入り口で早くも先頭に立つと、黄金の末脚がうなりを上げ、8馬身差の圧勝劇。規格外の怪物オルフェーヴルは、最後もあきれるほど強かった。

 「3コーナーを上がっていくところで勝ったと思いました。ラスト1ハロンでムチを入れると反応してくれましたし、すごいスタミナ。直線は乗っていて、本当にすごい馬だなと感じていました」。ウイニングランで“オルフェ・コール”が起こると、池添は右手を高々と突き上げた。

 やんちゃな不良少年は、いつしか大人になり、黄金の馬として完成された。もとより強い絆で結ばれた人馬だけあって、折り合いもパーフェクト。後方4番手から運び、3角からひとまくり。直線は独走態勢に持ち込み、悠然と金色のたてがみをなびかせた。ハラハラする場面などまるでなかった。最高の形で有終の美を飾った。

 天国の少年に贈るクリスマスプレゼントになった。秋のはじめ、池添は重篤な病状を抱える5歳の子どもがいることを知った。聞けばオルフェの大ファンで、いつもその走りに元気づけられているという。何かできることはないだろうか。関係者に協力を仰ぎ、行動に移した。

 放牧先の牧場に招くと、サンデーレーシングの勝負服を着て、坂路を2本駆け上がり、走る姿を見せた。「池江先生もその子のための勝負服をプレゼントしてくれて。照れていたけど、とても喜んでくれました」。その時に有馬記念のVも誓った。残念ながら少年は2週前に天に召されたが、だからこそ余計に負けるわけにはいかなった。約束通り、手向けの勝利を届けた。

 勝利後に振り落とされた新馬戦から3年半。仏遠征時には手綱を譲る悔しい思いもしたが、6度目のG1勝利で、名コンビはとうとう終着の時を迎えた。こみ上げる思いは当然ある。ただ、池添に涙はなかった。「泣かないって決めていたんですよ。最後は笑って送りだそうって。ありがとう、オルフェーヴル。いつか子どもで凱旋門賞に挑戦したいな」。とびきりの笑顔で、最強馬に別れを告げた。

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