【高松宮記念】リチャードが新電撃王
「高松宮記念・G1」(30日、中京)
“絶対王者”ロードカナロア引退後の覇権争いが注目された一戦。不良馬場での電撃戦を制したのは、M・デムーロ騎乗の3番人気コパノリチャードだった。直線半ばで一気に馬場の中央を伸びると、豪快にG1初Vを決めて春のスプリント王の座に就いた。馬主のDr.コパこと小林祥晃氏はフェブラリーSを最低人気で勝ったコパノリッキーに続き、G1を2連勝。2着は外を追い込んだ8番人気スノードラゴンで、3着に1番人気のストレイトガールが続いた。
雨上がりの空に自らの手で虹を描いた。速さだけでは制圧できない不良馬場。長い直線には高低差3・5メートルの坂も待ち受ける。過酷さを増した桶狭間の舞台。だがコパノリチャードの心は最後まで折れなかった。内で粘るエーシントップを外からパス。瞬時にセーフティーリードを築いてそのままゴールに飛び込むと、M・デムーロの左手が挙がった。
「チョーうれしいです。水曜の追い切りに乗せてもらった時も重馬場だったが、とてもいい動きをしていたので自信を持って乗れました」。母国イタリアでのリーディングのタイトルを手に、初来日したのは99年。“第二の故郷”で積み上げてきたG1の勲章はこれで10個目になった。3年前にはヴィクトワールピサでドバイワールドCを制して日の丸を掲げたが、今回はドバイへの思いを封印。応援する側に回って短距離王決戦戦に臨み“日本愛”を貫き通した。
JRA騎手試験にアタックした昨秋。サクラサクの朗報は届かず挫折を味わった。だが今はもう、先を見据えている。「あれから思うような騎乗ができなくなっていた。でも年明けに香港で12鞍を勝ち、日本で区切りの勝利を挙げられたのは力になります」。再受験への勇気をもらった1勝に笑顔がはじけた。
宮師は前日、熱田神宮に参拝。小林祥晃オーナーからのアドバイスで吉兆となるピンクのネクタイを着けて愛馬を送り出した。「今後のことはオーナーと相談しながらだが、メーンは1200メートルになりそう。まだまだ強くなる。そう思っています」。安田記念は見送り、スプリント路線を軸にローテを組み立てていく構えだ。初めて挑んだ6F戦で光を放った新・スピードスターは、まだ進化の途中。絶対王者ロードカナロアの背中を追う旅は、まだ始まったばかりなのかもしれない。