【皐月賞】ボニータV さあダービーへ
「皐月賞・G1」(20日、中山)
鮮やかに牡馬クラシック1冠目を制した。中団の外めで折り合った2番人気のイスラボニータが、直線できれいに抜け出して完勝。父フジキセキに初のクラシックタイトルをもたらした。蛯名はG1・20勝目。6週間後のダービー(6月1日・東京)で2冠奪取を狙う。1番人気トゥザワールドが2着で、3着は逃げ粘ったウインフルブルーム。4着ワンアンドオンリーまでの4頭が、ダービーへの優先出走権を獲得した。
人気のトゥザワールドの直後に取り付いてイスラボニータが4コーナーを回る。「折り合っていたので早めに出てもしのげると思った。一気に行った」と蛯名。レース前の混戦ムードもなんの、大外を突き抜けて完勝のゴールを切った。
「中山は初めてで対戦していない馬もいたが、馬を信じて乗った。新馬戦以来の折り合い(のつき方)だった」。勝因を聞かれた鞍上は、何度も“折り合い”のフレーズを繰り返した。父フジキセキ×母の父コジーンというスピード色の濃い血統。2戦目の新潟2歳Sでは、先週の桜花賞を完勝したハープスターに3馬身差の完敗を喫した。それでも、やんちゃな気性を爆発力に変えてつかんだ1冠目。区切りのG1・20勝がマンハッタンカフェ(01年菊花賞)以来2つ目の牡馬クラシック制覇になった蛯名は「次にもう1本ある。そこへ向けて頑張りたい」と、2年前にフェノーメノで鼻差涙をのんだダービーへ思いをはせる。
父の無念を晴らす勝利だ。フジキセキは95年の弥生賞まで無傷4連勝を決めながら、本番の皐月賞を前に左前屈腱炎を発症して引退。産駒はJRAのG1・11勝目となったが、“3冠確実”とまで言われながらも父が立てなかったクラシックの舞台では、初Vとなった。
80年の開業以来、34年かけてようやくクラシックを手に入れた栗田博師も万感の表情を浮かべる。「車の中でスティービー・ワンダーの『心の愛』を4~5回聞いてきた。タレンティドガールが(87年エリザベス女王杯を)勝った時にもらったCDです」。
心の愛が84年に発表された直後は厩舎の絶頂期。86年ダービーでグランパズドリームが2着、93年天皇賞・秋をヤマニンゼファーが制した。久々に訪れた頂点への道。すっかり円熟味を増したトレーナーはニヤリ笑ってつぶやいた。「トシを取ったせいか、自然体が一番。プラス2F(の距離)を克服してくれれば…」。栗田博師の“I LOVE YOU”がボニータをもうひと押しするのか。
フジキセキは11年以降、種付けを行っておらず、現3歳がラスト世代。父の思いも背負い、6週間後の大一番に挑む。