【天皇賞】キズナ最高潮!ユタカ舌好調
「天皇賞(春)・G1」(4日、京都)
名手には、1着でゴールを駆け抜けるイメージしかない。長距離の古馬頂上決戦へ向けての最終追い切りが4月30日に行われ、G1・2勝目を狙うキズナは栗東CWで躍動。武豊は「素晴らしい」と絶賛した。ディープインパクト産駒が良績をこれまで残せていない長距離にも「大丈夫」とサラリ。自慢の切れ味で鮮やかに盾を射抜いてみせる。なお、出走馬と枠順は1日に確定し、馬券は2日に一部ウインズで前々日発売が行われる。
コーナーに合わせて手前(走る際の軸脚)を変えたのが合図だった。栗東CWでゆったりと伸び縮みしていたキズナの四肢が、一気にピッチを上げる。前肢は鼻先よりさらに前に。後肢は雨を受けつつなびく尾よりも高くチップを蹴り上げる。
鞍上・武豊は相棒の刻むリズムに寄り添うかのように手綱を動かしていく。最後まで切れのある動きを維持して6F82秒0‐37秒5‐11秒8を計時。そのゴールを迎えた名手は雨のなか、ほほ笑んでいるようにも見えた。
「ワクワクしています。特に、この天皇賞は」。双眼鏡越しに映った口もとは、やはり幻ではなかった。万全の臨戦態勢。いかにポーカーフェースが常の天才といえども、一点でも曇りがあればこれほど正直な笑顔で言うことはできないだろう。「素晴らしい動きでしたね。馬場が少し重かったので前半はセーブ気味に入りました。佐々木調教師からも“ラストをしっかり(追ってくれ)”と言われましたが、しっかり伸びました」
今季始動戦の大阪杯は、阪神内回りの短い直線を最後方から一気に先団をのみ込む圧巻の勝利。主戦の「変わらずキズナだという感じがした」という言葉は、昨年のダービー馬への信頼の表れだ。
もはや、重箱の隅に残る心配点は「未経験の距離」の一語くらいしか残っていない。だがJRAの顔は、こう言って苦笑する。「もう、そこくらいしか言うことがないのかもしれませんね。大丈夫だと思っています。僕が心配しても仕方がないし、大丈夫だと思って乗ります」。字にすればサラリとかわした感じだが、あとで振り返れば愚問だったと示す自信が透いて見える。
だからこそ、自信のひと言を上書きした。「3歳時は乗るたびに成長を感じていましたが、今、充実期に入ったと思います。強いですよね。春の大目標ですし、万全の態勢できたと思います。思い切って乗りたいと思います」。馬への信頼も、勝利へ導くイメージも、名手の中では揺るぎない。