三井所“元甲子園球児”のA1レーサー

 9日から夏の全国高校野球選手権大会が開幕し、甲子園球場で熱い戦いを繰り広げる。かつてこの地を踏み、現在はボートレーサーへと転向したアスリートが3人。三井所尊春(35)=佐賀・88期・A1、安河内将(24)=東京・111期・B2、石丸海渡(21)=香川・112期・B1。グラウンドに青春をかけた野球少年が、人生の舞台を水上へと求めた。来たれ、やまと学校へ(118期生募集中)。夢はまだまだ終わらない。

 ボートレーサーは成績によって4つにクラス分けされる。三井所はその最高位『A1』に長く在籍する。また、最高グレードレースのSG(競馬でいうG1)に10回出場。昨年11月「SG・チャレンジカップ」(津ボート)では、参加選手52人のなかで、6人しか勝ち上がることができない優勝戦に進出。自他ともに認めるボート界のトップレーサーである。

 その三井所が甲子園の土を踏んだのは高校3年の夏(佐賀商はその3年前に全国制覇を果たしている)。9番サードで出場し、1回戦で青森の光星学院(現・八戸学院光星、今大会も出場)を10対9のサヨナラで撃破。2回戦は徳島商と対戦したが、3対7で涙をのんでいる。「スクイズを1回決めただけで、2試合とも無安打でした」と悔しそうに振り返った。

 ちなみに1回戦で満塁本塁打を含む6打点を挙げ、のちに広島東洋カープに2位で指名される兵藤秀治はチームメート。現在は競輪選手として活躍する。

 名門校で甲子園にも出た。当然大学からも声がかかる。しかし「この身長(当時は170センチ)では大成しないと思い、全てお断りした」と決断に迷いはなかった。そして、この体格だからこそ生かされる競技を選んだ。まだ当時はスポーツ推薦枠がなく、3回目の受験で合格する。

 「野球をしてきたので、周りの人よりも努力してきたつもりです。野球で学んだことは“簡単に諦めない”こと。(研修所の)厳しい訓練に耐えられたのも野球をやってきたから」

 「常に目標があることがボートレースの魅力。次のレース、また次のレース。最終目標は『グランプリ』(賞金王決定戦)という最高峰の戦い。自分のやる気次第で高収入も夢じゃない」

 もう少し体格が良ければ…と思うこともあった。しかし、今はボートレースに出会って感謝しているという。そして「天職です」と胸を張った。

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