【スプリンターズS】ドラゴン大金星
「スプリンターズS・G1」(5日、新潟)
12年ぶりに新潟競馬場で行われた電撃G1。大外18番枠のスノードラゴンが13番人気の低評価を覆し、大外から一気に突き抜けた。春の高松宮記念で2着に好走した実績はあるものの、芝では7戦して未勝利。初VをG1の大舞台で決めた。大接戦の2着争いを制したのはレース3連覇を狙った岩田騎乗の2番人気ストレイトガール。3着に5番人気のレッドオーヴァルが入り、1番人気のハクサンムーンは13着に敗れた。
大混戦となったゴール前、白い馬体が馬群の大外を躍動した。13番人気の低評価に反発するかのように、スノードラゴンが豪快な直線一気でV。開業9年目の高木師、デビュー10年目の大野のコンビが、12年ぶりにG1が行われた新潟で大輪の花を咲かせた。
3日朝のことだった。枠順抽選に向かう高木師が、大野に希望の馬番を聞いた。「8番が理想ですけど、18番だけは勘弁してください」。だが、実際に引いたのはその大外枠。落胆を隠せなかったが、もう腹をくくるしかなかった。これまでよりも好スタートを決め、楽な手応えで中団の外めを追走。「いい感じで(レースが)流れてくれて、道中は馬の後ろにつけられました」と理想の展開に馬上でほくそ笑む。あとは直線で自慢の末脚を信じて追いまくるだけ。激しい2着争いを横目に半馬身抜け出したところがゴールだった。
10回目の挑戦でビッグタイトルをつかんだ大野が「G1を勝つことにあこがれてこの世界に入った。素直にうれしいです」と満面の笑みを浮かべれば、高木師は「興奮しています」とストレートに喜びを爆発させる。
芝はこれまで7戦して未勝利。デビューから3戦連続芝で2着に奮闘したが、脚元の弱さを考慮してダート戦で地道に力をつける日々が続いた。堅実ながら、なかなか勝ち切れない“善戦マン”のまま6歳に。転機は今年の春、ダートの高額条件で賞金的に出走できないことが続き、高木師が芝への転戦を決断したことだった。
約3年ぶりに芝に出走したオーシャンSで0秒2差2着に奮闘。その勢いを駆って初めて挑んだG1の高松宮記念でも2着に食い込むと、芝路線に戻って7カ月で一気に短距離界の頂点に立った。
父アドマイヤコジーンは12年前に初めてG1が新潟で行われたスプリンターズSで2着。父の無念を晴らした“孝行息子”は、次の目標に香港スプリント(12月14日・シャティン、芝1200メートル)を掲げる。キャリア35戦。遅咲きのスプリンターが、今度は世界制覇に乗り出す。