【有馬記念】福永ロングインタビュー
「有馬記念・G1」(28日、中山)
ジャパンC2着馬ジャスタウェイに騎乗する福永祐一騎手(38)=栗東・フリー=に、“栗東取材芸人”ことビタミンSのお兄ちゃん(36)が直撃。今回がラストランとなる“世界No.1ホース”への手応えと中間の上昇度を語った。さらには自身からの乗り代わりでジャパンCを制したエピファネイアへの思い、結婚後の気持ちの変化などなど…。お兄ちゃんだからこそ聞けた本音が満載。必読の内容だ。
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福永が騎乗するジャスタウェイは、今年3月のドバイデューティフリー(UAE・G1)を圧勝。この活躍を受けて、IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表したワールドベストホースランキングで8期連続世界1位の座をキープしている。
-いよいよ有馬記念。世界No.1ホースとして君臨してきたジャスタウェイは、今回がラストランになります。
「オーナーの希望で、もしかしたらジャパンCで引退するかも、という話を聞いていましたけどね。状態は前回よりはるかにいい。思えば、前回は良くなかったから」
-それでもジャパンCでは2着に。距離も長いんちゃうかとか、いろいろと言われながらも好走しました。
「地力の高さやね。すごい馬だと思った。追い切りごとに動きが良くなって、馬体の張りも良くなって、競馬の時にギリギリ戻ったかな、という感じだったけどね」
-1週前追い切りの感触はどうでしたか。
「またがった瞬間、張りが前回と違うのが分かった。本来のあの馬の状態でいけるんじゃないかな。これまで、本当にこの馬の調子がいいな、と思ったのは、安田記念(1着)の時と凱旋門賞(8着)の時だけど、今回もかなりいいと思う」
-舞台は中山の2500メートル。距離がさらに少し延びますが。
「距離が延びるのも、舞台が中山になるのも、この馬には良くないけど…」
-良くないですか。
「良くないよ。良くないけど、馬場状態がパンパンであれば。ジャパンCの時みたいな緩い馬場は良くないね。向正面で脚を取られていたし。(不良馬場の)安田記念は勝っているけど、ああいう馬場は本当は良くない。コース、距離でのマイナス面はあるけど、状態面ではプラスということ。楽しみはあるよ」
-最高の形で締めくくりたいですね。
「デビュー前からまたがっている馬だし、いろいろ思い出があるけど…有馬記念がジャスタウェイとの最高の思い出になるようなレースにできたらいいね」
-こんなこと聞いてええのか分からないですけどジャパンCでは勝ったのが、同じ“お手馬”のエピファネイアじゃないですか。率直にどう思いましたか。
「やっぱり強いなと。ただ、あんな“切ない直線”はないで…。こっちもイメージ通り乗れて、直線もスムーズに出せたけど、天皇賞・秋やドバイの時ほどのはじけそうな手応えがなくて、最後の100メートルで止まってしまった。それでエピファが抜け出しているのが前に見えて“全然追っつかへんやん!”って」
-その切なさ、分かります。
「エピファの最終追い切りにも乗っていたから、良くなっていたのは分かってて。トモがグッと入ってね」
-エピファが勝って、うれしいというのはあるんですか。
「1つの感情では言えないよね…負けろとも思っていないし。あの馬のこと、ジョッキーのなかでは自分が一番よく分かっているから、やれるとは思ったけど、あそこまで強いとは思っていなかった。スミヨンも初騎乗でうまく抑え込んでいたしね」
-もし、乗り馬が逆だったら、と想像したことはありますか。
「そうね…逆だったら…(しばし考えて)やっぱり勝ってるんちゃう?エピファが」
-逆にジャスタウェイが2着に来ていない可能性もありましたよね。
「でも、それを考えてもしょうがないから。“俺から乗り代わったから強い”って言われるのは当然だと思うし。そういう評価をする人がいるのは自然だと思う」
(少し間を空けて)
「(スミヨンが)うまいのは当然。フランスのリーディングジョッキーで、通算2000勝以上してる騎手やで。でも、自分じゃ到底かなわないとも思わない。すごいジョッキーだとは思うけどね」
-福永さんも海外で乗っていますもんね。
「実際、香港で同じレースに乗っているけど、歯が立たないとは思わない。乗る馬によっては自分が勝つときもあるし、同じ馬に乗っても、自分の方がうまく乗るときもある。そもそも、いい流れのときもあるし、かみ合わないときもあるからね。昔ほどそんなことで一喜一憂しなくなったよ」
-ブレなくなったんですか。
「自分が取り組んでいることに対しての自信もあるし、結果も出てきた。だから、これで評価が落ちて、乗り馬が減ったら、辞めればいいだけ。大した問題じゃない。でも自分を評価して、いい馬の依頼をくれる機会がある限りはジョッキーをやっていたい」
-福永さん自身の今年一年はどうでしたか。
「国内のレースではちょっと良くなかったね。2着が多かったかな。その分、海外のレースは良かった。海外にたくさん行ったし、結果も良かったので。ドバイ、香港、イギリス、トルコ。それから凱旋門賞でフランスに行って、最後はまた香港に行って…」
-北海道へ牧場巡りにも行きましたね。
「海外ちゃうやん(笑い)」
-海外ちゃいますけど、まぁ、年中忙しくしていましたよね。そういえば一昨年の騎乗停止の際、岡部幸雄元ジョッキーと話す機会があって競馬に取り組む姿勢というか、考え方が変わったみたいなことをおっしゃっていたと思うんですが。
「結果を出すようになって、同時に“アンチ”も増えて、いろいろと言われることがあったけど、今はそういうのも流せるようになった。心身のバランスが取れて仕事ができている」
-アンチって、有名人にとっての宿命ですよね。
「過敏に反応してしまうときもあったけどね。ま、でも、自分を応援してくれている競馬ファンのために、いい仕事ができればいいかな、という気持ちが大きいかな」
◆プライベートでは13年8月に元フジテレビアナウンサーの松尾翠さんと結婚。今年の3月には待望の第1子長女が生まれた。
「結婚はやっぱり大きいね」
-大きいですか。
「だって、変わったやろ、見てて」
-確かに変わりましたわ。
「結婚して、丸くなって守りに入ったっていうのは勝負師として良くない…っていうざっくりとしたイメージってあるじゃない。俺も若い時はそう思ってた」
-そうじゃなくなったんですか。
「ま、実際、丸くなってるわけやん(笑い)。勝負師として丸くなることは良くない面もあるかもしれないけど、それを上回るプラスアルファを、違う部分でもらっているわけ。ギリギリのせめぎ合いのなか、スペースを探して、突っ込んで勝ってやろうとか、若い頃と比べると当然…ない。でも、そんな狭いところを突かなくても勝てる技術は若い時よりもある」
-技術で、そういうギリギリの状況になりにくくしているというのもありますよね。
「そうやね。結婚して子どもができて、守るものができた。独身のころとはスタンスが違う。でも、今の方が強い自分だと思うし、周りから“結婚して成績が悪くなった”と言われないように頑張っているのもある」
-(10日に行われた)香港のインターナショナルジョッキーズチャンピオンシップでは優勝しましたね。
「自分がやってきたことを、海外で再確認できた気がする。どの国に行っても通用するような騎乗ができれば、と思ってやっているから。まだまだ途中だけど、方向性は間違っていない」
-確認の積み重ねですね。
「そうやね。来年、再来年ぐらいになったら、騎手としてピークの状態に持っていきたいね」