【ボート】新築の津選手宿舎に潜入

 プロ野球やサッカーなどと違い、公営レースでは公正を期するため、開催中は外部との接触が禁じられている。特にボートレースでは、選手は最長8日間(荒天などで中止順延があればそれ以上)レース場と宿舎を往復するだけの生活を強いられる。そんななかで、選手のプライベートは?食事は?今回は新築されたボートレース津(三重県津市)の選手宿舎を直撃。一般には知られることのないボートレースの裏側に潜入した。また、同場では5月12~17日の日程で「開設63周年記念・G1・つつじ賞王座決定戦」が開催される。合わせて紹介する。

 命の次に大切なお金を賭けて行われる公営競技。公正、安全が最優先されるため、開催中のボートレーサーは規律正しい管理のもとに置かれる。また、体調面においてもベストの状態でレースに臨めるよう、厳しく律している。

 ボートレースは土日開催のみの中央競馬などとは異なり、平日を含めた6日間連続開催が基本。また、初日の前日は前日検査(通称前検)といって、正午までにレース場入りすることが義務づけられている(ナイター開催の場合は午後4時)。公共交通機関のダイヤの乱れがない限り、1分1秒の遅刻も許されない。万が一不注意で間に合わなかった場合は、処分の対象となり、褒賞懲戒審議会にかけられ、あっせん停止(レースに出場できない)などの重い処分を科せられる。

 ちなみに今年の3月16日、徳山ボートの前検に間に合わなかった選手がいた。JRのダイヤ改正に伴い、これまで停車していた徳山駅を新幹線が通過。慌てて引き返したが間に合わず、その開催の欠場はもちろんのこと、さらに1カ月の出場停止処分が下ることになりそうだ。

 この前検日を含めて通常7日間は、外出禁止はもちろん外部との接触が一切断たれる。携帯電話、スマートフォンなど、全ての通信機器は管理担当が強制的に管理保管する。中央競馬では先日、某騎手が調整ルームにおいて携帯電話を使用、外部と通信したことで30日間の騎乗停止処分を科せられた。使用を自主規制している中央競馬界とは異なり、ボート界では故意の持ち込み、使用は選手資格のはく奪にもなりかねない大罪だ。

 開催中の選手はレース場と選手宿舎を往復する毎日となる。立地条件の都合でレース場と選手宿舎が離れており、バス移動するところがある。今回取材した津の宿舎も以前はバス移動だったが、2014年1月、レース場内に新築。移動の煩わしさが省けたとして選手間での評判も上々だ。

 開催最終日まで外部との接触が禁止されている以上、宿舎での過ごし方はレースで最高のパフォーマンスを発揮するためにも重要になる。

 まずは食事。夕食時間が早いのには驚いた。食堂の張り紙にある通り『宿舎へお戻り次第』とある。ナイター開催を除けば、どのレース場でも午後4時30分あたりが最終レースだが、となると宿舎が併設されているレース場の場合は5時前後は、夕食時間になる。

 水上で激しいバトルを繰り広げるレーサーたち。さぞ、夕食の箸も進むだろうと思いきや「宿舎でも戦いは続いてます。体重を増やすわけにはいきませんから」とは某選手。エンジンを駆る競技だけに、体重が軽ければ軽いほど前に進む。陸に上がれば、今度は体重調整という自分との戦いが待っている。仲間がそろい、楽しいはずの夕食なのだががっつく選手は一人も見当たらない。

 しかし、無制限に減量していいかといえばそうではない。男子は50キロ(11月1日から51キロに変更)、女子は47キロという下限がある。それ以下の体重になると、調整ベストなどの着用が義務づけられる。なるべく下限ギリギリで出走できるように、体重調整にはレース以上に神経を使う。

 夕食の内容は基本ワンプレートで、あとはバイキング方式。ちなみにこの日の献立は豚の角煮とサーモンのレモンバターソースがメーンであとは肉団子、揚げナス、ミネストローネ、揚げそばが自由に盛りつけられるようになっていた。メニュー以外では白ご飯、五穀米の米類と野菜サラダが常設されていたが、やはりカロリーを考えてか、野菜サラダに人気が集まっていた。

 しかし、メーンメニューさえ完食する選手は少ない。流し台に返却されたプレートは食べ残しが…。「そりゃ、腹いっぱい食べたいですよ。でも、明日のレースのことを考えるとね」とほとんどの選手が断腸の思いで箸を置くのだという。

 同じ公営レースでも、競輪は宿舎内ではアルコールOK。しかし、ボートレースでは厳禁だ。普段からアルコールをたしなむ選手にはつらい数日間だが、ノンアルコールビールは販売されており、せめても酔った気分になる?

 食事もそこそこに選手が向かう先は大浴場。「管理中は大したトレーニングができないからね。一番手っ取り早い減量手段」と特にサウナは、汗を流す選手たちであふれかえるとか。ちなみに男女が同じレースで競われることが多いボートレースは、風呂を時間差で利用することはなく、全ての宿舎で男風呂女風呂が別々に設置されている。

 サウナでたっぷり汗をかいたあとは、各自が自分の時間を過ごす。津の宿舎は一人部屋だが、テレビは置いていない。談話室が数室ありそこでテレビを見ることができる。また、津の宿舎は漫画本が充実しているのが特徴で気分転換を図る選手も多いという。ちなみに、囲碁将棋を楽しむことはできるが、マージャン卓は置いていない。

 翌日は午前8時までに朝食を済ませたあと、レース場へと移動する。各自が三々五々行動するのではなく、整列して点呼をとったあと出発する(レース場から宿舎へ戻るときも同じ)。この時点から選手は少しずつスイッチが入り、レースへと集中力を高めていく。

 そして、最終日の自分の持ちレースを終えると管理解除となり、晴れて自由の身に。うまいビールが飲めるかどうかは…成績次第ということになる。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

競馬・レース最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(競馬・レース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス