【天皇賞】ゴールド“三度目の正直”
「天皇賞(春)・G1」(3日、京都)
“三度目の正直”で、ついに盾を射抜いた。後方から向正面で一気に動いた2番人気のゴールドシップが、直線でも二段駆けのように末脚を伸ばし、6度目のG1制覇。前2年は5、7着に完敗した一戦をついに勝ち獲った。次戦は宝塚記念(6月28日・阪神)で3連覇の大偉業を目指す。大外強襲のフェイムゲームが首差の2着。1番人気のキズナは7着に敗れ、これで復帰後3連敗となった。
ゆっくり上ってゆっくり下る-。21世紀の芦毛の怪物が、淀の坂に伝わるセオリーをぶち破り“鬼門”を突破した。
2周目の向正面、残り6F過ぎ。横山典がゴールドシップの首を激しくせっつく。「お願いするしかないんですけど、今回はげきを飛ばしました」。後方から先団までの一気まくりでレースの流れをわが物にし、消耗戦に持ち込んで直線で抜け出す。最後は大外強襲の2着馬を首差退けて、現役最多となるJRAのG1・6勝目のゴールへ飛び込んだ。
「ゴールドシップと僕との“闘い”でした。どっちが勝ったかって?彼です。でも、僕もいい仕事ができたと思います」。キャリア30年目の名手が笑顔で胸を張った。“闘い”は、レース2週前から始まっていた。阪神大賞典3連覇の後、右前球節の内出血が判明し、当初は回避の可能性もあった。中間じっくり乗り込んで、とはいかず、1週前追い切りに横山典が騎乗した時から馬は荒々しかった。直前の追い切りでも大暴れ。栗東坂路下にたどり着くまで何度となく立ち上がり、「こんなに悪いのは初めて」と鞍上は閉口した。
この日の発走直前にもやらかした。ゲートに入らない。後ろ向きに近づけても転回すると頑として動かない。5分ほどの格闘の末、目隠しをしてようやく入った。我慢比べの末につかんだ勝利に「彼もよく頑張ったが、僕自身もよく耐えた。能力をうまく出せたんじゃないかな。乗ってて面白いよ。誰が乗っても走るわけじゃない。こういう馬でこそ自分を試せる」。この男の自画自賛など、ほとんどお目にかかれない。それほど満足のいく会心の騎乗だった。
昨年、14着に大敗した凱旋門賞参戦については「現時点では何とも言えない」と須貝師は慎重に言葉を選んだが、「ゲート再審査もあるし一筋縄ではいかないが、宝塚記念に向けて努力していきたい」と、次は昨年史上初の連覇を決めたドリームレースを目指す。3連覇の偉業達成へ、そしてシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカと並ぶ、史上最多のJRA・G17勝目へ。まだまだ人馬の格闘は続いていく。