【安田記念】モーリス戦国マイル新王者
「安田記念・G1」(7日、東京)
戦国マイル界に新王者が誕生した。1番人気のモーリスが好位から抜け出してV。4連勝でG1初挑戦初制覇を決めた。堀師はダービー(ドゥラメンテ)に続き2週連続G1勝利。全国リーディングでもトップに立つ厩舎の勢いは止まらない。
栄光のダービー制覇から1週間、ツキはまだ堀厩舎に残っていた。「9割方、出遅れると思っていた。たまたまゲートを出た」と川田。課題の発馬を決めるとモーリスは積極的に3番手を追走した。
同厩のリアルインパクトがペースをつくり、直線もケイアイエレガントが失速せずに踏ん張る、願ってもない流れに。じっくり待って追いだした川田は、計ったようにヴァンセンヌの追撃を首差残した。「期待に応えられてホッとした。2歳の時から背中のいい馬だったが、成長している。いい時に乗せてもらってラッキー」。5戦ぶりにコンビを復活した鞍上は笑顔を見せた。
2年前の5月20日、札幌競馬場で行われたHBAトレーニングセール前日の公開調教で2F21秒80の一番時計をたたき出した。10月の新馬戦ではいきなりレコード勝ち。だが、栗東に在籍していた2、3歳時は難しい気性が出世を阻んだ。だが、堀厩舎への転厩をきっかけに素質が開花。1000万下から再スタートすると、一気の4連勝で堂々G1まで手に入れた。
「G1を勝てる馬だとは、まったく想像していなかった。急に1番人気の支持を受けて、それに応えられた」。すっかり勝利調教師インタビューが板についてきたトレーナーも、ここまでとんとん拍子に事が運ぶとは思っていなかったようだ。
うまく行き過ぎた思いもあるのか「ゲートの駐立が前走より良くなかったので、暴れないかひやひやした。本当は距離を延ばしていきたいが、もう少し折り合いがつくと思った。道のりは遠い」と案外評価は辛口だ。
それでもドゥラメンテの2冠、リアルインパクトの豪G1と合わせて春は国内外のG1を4勝。リーディングトレーナー争いでも全国首位に立ち、まさに独り勝ち状態だ。「たまたま“最大瞬間風速”が吹いている。そんな感じ」。余裕たっぷりに、5週続いた府中のG1シリーズを締めくくった。
07年の春秋マイルG1連覇を決めたダイワメジャーを最後に、主役不在の状態が続くマイル界。4連勝、しかもG1初挑戦初Vを着差以上の完勝で決めた新王者が、絶対王者として君臨し続ける。