菜七子魅せた!JRAデビュー戦2着
「3歳未勝利」(5日、中山)
この実力はもう“本物”だ。16年ぶり、7人目のJRA女性ジョッキーとなった藤田菜七子騎手(18)=美浦・根本=が5日、中山2Rで中央競馬デビュー。惜しくも2着に敗れて初勝利こそ逃したものの、JRA女性騎手の中央デビュー戦では最高着順をマークした。この日は1鞍のみの騎乗で、きょう6日は中山で2鞍を予定。3日の川崎競馬に続き、秘めた実力を存分に発揮したアイドルジョッキーの初勝利は、もう目前に迫っている。
場内の歓声がどよめきに変わる。残り200メートル。直線入り口でやや置かれ加減になったネイチャーポイントの魂に、藤田菜七子の左ムチ連打は確かに響いた。「絶対に抜いてやる」。グイグイと脚を伸ばすが、惜しくも3/4馬身差届かず2着。JRA初騎乗初勝利の快挙こそ逃したが、JRA女性騎手の中央デビュー戦では最高着順だ。
パートナーは新馬戦から13、13、10番人気で9、5、9着の戦績にもかかわらず、“ナナコ人気”で単勝8・1倍の3番人気に支持された。パドックは通常の日曜メーン重賞並みとなる約3000人の人だかり。それでもアイドルジョッキーは動じない。「プレッシャーが怖いから人気は見ないように乗っている」。自分を見失うことなく、常人離れした集中力とともに臨んだ。
沸き上がる周囲とは対照的に頭はクールに回転した。「根本先生からは“ハナに行け”と言われましたが、他に速い馬がいた」と即座に作戦を変更。先行争いから一歩引いた位置で機をうかがい、脚をためた。3日の“ひな祭りデビュー”では小回りの川崎競馬場を攻略して6戦中4戦で掲示板を確保するなど躍動。「それがあって今がある」と吸収力の高さもアピールした。
「(道中で)内ラチに接触もした。最後もがむしゃらに追っているだけ。40点です」と、自己採点は川崎競馬騎乗時に付けた30点からわずか10点の上積みとシビアだが、師匠の根本師は「私は70点。そうじゃないと2着には来ない。かわいい顔をしているのにレースではいい意味で強引なところもある。車に乗って変わる人と同じ」と天性の勝負師ぶりに舌を巻く。
JRA女性騎手のデビュー最速Vは00年西原玲奈元騎手の9戦目、初勝利までの最速日数は96年増沢(旧姓牧原)由貴子元騎手の16日(13戦目)。記録を塗り替えるべく、日曜の中山では2、12Rの2鞍に騎乗する。両レースとも競馬界のレジェンド・武豊と顔合わせ。「競馬を見始めたころからの憧れ。雲の上の存在です。いろいろと教えてもらいたい」。充実のプロ生活を送る菜七子の大きな瞳は日に日に輝きを増している。