ついにやった！１０日の福島競馬９Ｒで２番人気のサニーデイズに騎乗した藤田菜七子騎手（１８）＝美浦・根本＝が、Ｇ１レース並みの大声援に応えて１着でゴールイン。３月５日のＪＲＡデビューから５１戦目で待望の初勝利を挙げた。中央競馬でＪＲＡ所属女性騎手が勝ったのは、０４年６月の牧原（のちに増沢）由貴子以来１２年ぶり。アイドルジョッキーが大きな一歩を踏みだした。

　ついに歓喜の瞬間が訪れた。冷たい北風が舞う中、直線入り口で藤田菜七子騎乗のサニーデイズが堂々先頭へ。次の瞬間、スタンドから一斉に「ナナコ！～」「ガンバレー～！」の大声援が沸き起こった。

　懸命に左ステッキを振るって相棒を激励すると、後続との差は広がる一方。そして迎えた１着でのゴールライン。思わず、菜七子の瞳に涙があふれた。「これまでたくさんいい馬に乗せていただきながら結果を出せなかった。このまま勝てないんじゃないかと思っていたので」と感極まった理由を明かした。

　３月３日の川崎“ひな祭り”デビューから１カ月余り。予想以上の周囲のフィーバーぶりに、困惑する日々を送った。「充実していましたが、すごく長かった」。同２４日の浦和競馬で初勝利を挙げたものの、あくまでも地方競馬でのもの。中央では２センチ差で逃したレースもあり、“１勝”への欲求は高まるばかりだった。

　厩舎の兄弟子・野中が明かす。「悩んでいる姿をずっと見てきました。“慌てることはないし、（初勝利が）遅くても出世が遅れるわけじゃない”って言ってあげたんです。この１勝で少し楽になったでしょう」。前日には自身も今季初勝利を挙げ、さらに同じ兄弟子の丸山がニュージーランドＴで重賞制覇。そんな追い風にも見事に乗った。

　１２Ｒの騎乗を終え、尊敬する豪州のリサ・オールプレスが昨年の新潟で記録した１節の女性騎手最多騎乗数１６鞍にも並んだ。「正直疲れたけど、周りの方のサポートで競馬に集中できました」と感謝する。１２日は金沢、１３日には船橋へ参戦。そして次週は土日とも再び福島へ参戦する。「もっと上手になりたいし、技術を磨いていきたい。また応援お願いします！」。この１勝はまだまだ“通過点”。１８歳の女の子の挑戦は始まったばかりだ。