「ダービー・Ｇ１」（２９日、東京）

　わずか約８センチ差の激闘だった。３番人気のマカヒキが、直線の激しいたたき合いを制して第８３代のダービー馬に。現役最年少ダービージョッキーとなった川田将雅騎手（３０）＝栗東・フリー＝は、史上８人目のクラシック完全制覇も達成した。サトノダイヤモンドは不運の落鉄に泣き２着。１番人気の皐月賞馬ディーマジェスティは３着に敗れ、蛯名の悲願達成は、またしてもお預けとなった。

　意地とプライドをかけた追い比べだった。その差わずか約８センチ。鼻差の激闘を制したマカヒキが１３年に生産された６９１３頭の頂点に立ち、栄えあるダービー馬の称号を得た。

　直線残り２００メートルでＶロードができた。エアスピネルが一歩先に出たため、サトノダイヤモンドとの間にできた１頭分のスペースを突くと、残り１００メートルで先頭に。懸命に追う川田。襲い掛かるルメール＆サトノダイヤモンド。皐月賞で初めて土がついたディープインパクト産駒２頭のたたき合いは、馬体を並べたところがゴールだった。

　健闘をたたえ合う握手に「勝ったなと思った」と振り返る鞍上だが、長い写真判定に「どうなのかなと思いましたが」と不安もあった。掲示板の１着に３番がともり、同時に沸き起こる１３万人の川田コール。「感極まったというのが率直な感想です」。天を仰ぎ、目を潤ませた。

　初めてまたがった瞬間、牝馬特有の切れを武器にしたハープスターに似た衝撃を受けたという。「素晴らしい飛び。牡馬ではなかなか味わえない」。その乗り味から、負けられない使命感を抱いて臨んだ皐月賞だったが、２着に敗れた。「悔しいというか申し訳ない気持ち。何としてもダービーで結果を、と思っていました」。後方から直線大外に持ち出した皐月賞とは違い、中団のインで人馬の呼吸を合わせた好騎乗でのリベンジ成功に、ホッとした表情を見せた。

　川田は史上８人目のクラシック完全制覇を達成。現役最年少のダービージョッキーとなった。だが、“人よりも馬”というのが鞍上の信念。「マカヒキがダービー馬になれたことが何よりです」と、馬が主役であることを何度も強調した。

　父ディープインパクトが勝った日と同じ５・２９の勝利。あれから１１年がたち、同じ勝負服で父子制覇を果たした。その先には父が果たせなかった世界の大舞台を見据えるのか－。最強世代の頂点に立ったこの日の栄冠はまだ序章。その先には夢と可能性が無限大に広がっている。